第48話:ティータイムレポート

「あ~・・・生き返るわぁ~」


糖分が体に、脳に行きわたる。やはり甘い物は良い。


「ふふっ、お疲れさまです」


杏莉さんはいつもの笑顔をこちらに向けている。


この笑顔にも俺の疲れを癒す成分が含まれているようだ。


「二つ、調べてて気が付いたことがある」


俺は考えをまとめ終えると杏莉さんに話し始めた。


「一つは書斎にあるファイルには『起きた事件』と『終わった事件』の書類しかない事。君の親父さんなら調べている途中の事件の調査記録なんかを作っていてもおかしくなさそうなんだがそれが無い。特に母親の失踪に関して調べていたのだとしたら10年以上も経過している。流石に記憶だけでどうにかできる量じゃないだろう。もしかすると何処かにその調査資料が隠されているのかもしれない。それが手に入れば真相に一気に近づけるはずだ。二つ目はファイルに記録されている事件の事だ。起きた事件のファイルに自殺まで記録されている。これは変だ。警察が自殺と断定して事件性はないとしているのなら調べる必要はないはず。なのにそれが記録されてるってことはその自殺はのかもしれない。不審死もそれに含まれるかもな。どっちも魔法を使えば偽装工作は可能だと思う。親父さんは事件が何らかの方法で隠蔽されていると考えたのかもしれない。不自然な調査記録と事件性のない事例まで調査している理由、この二つの謎が解ければ親父さんが居なくなってしまった理由が解るかもしれない」


考えていたことを一気に話して一息つく。杏莉さんは真剣な顔をしてその話を聞いていた。


「父なら調査していた事件の記録をどこかに隠していたかもしれません。解決した事件の話は聞いたことがありますけど調査中の事件、特に母の事は聞き覚えがないので。 それとなんの関係もない事を調べたりするような人でもありませんでした。慧さんの言う通り、事件性のない事例になにか疑問を持っていたのかも・・・」


「調査資料はこの家に隠してなかったらお手上げだな。その時はファイルにあった自殺や不審死を調査するしかなさそうだ」


「多分書斎の何処かに隠してあると思います。後で一緒に探してみましょう」


「そうだな、とりあえず今日は・・・いいか。普通に探しても見つからなそうだし時間があるときにやろう」


少し冷めてしまった紅茶を飲み干してソファに体を預ける。


慣れない作業をしたせいか睡魔が襲ってくる。俺はその悪魔に抗うことができなかった。


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