しそう/めいそう

木会

パッチワーク

 自分で考えることは苦手だ。

 手がかりがいくつあったって、それを並べることだけで精いっぱいで、足りないピースの存在に思い至りもしない。


 誰かが主張した言葉の意味を、解釈しようとした。

 目の前に並べられた意味の解らない音を意味のこもった言葉へ変換して、この身の中へしまい込んだ。


 内容を完全に理解することはできないけれど、心地がよい主張はこの身に馴染んだ。きっとこれが僕の主張したい事柄なんだと思うことにした。


 のどに刺さる骨の痛みよりも不快な主張はどうしても消化できなくて、気味が悪かった。きっとこれは、僕の主張したい事柄ではないんだと思った。

 あるいは間違った主張だったのだ。それは僕にとっての絶対悪。一度この身の中へ入れたものを外へ捨てることはできないけれど、捨てたいものとして端にまとめておくことにした。


 心地よかった<誰かの主張>たちを繋ぎ合わせて、僕の考え出したものではない僕の主張の完成。


 僕は必死に考えた。<誰かの主張>の繋ぎかたを。

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