はしばし

葉原あきよ

頭蓋骨を探せ

 宇宙船に乗って兄の遺骨を拾いに来た。

 宇宙生まれの人の骨は宇宙に還ってしまう。他の骨はどこかに行ってしまうのに、頭蓋骨だけは一箇所に集まる。頭蓋骨の吹き溜まりだ。

 宇宙船には私の他にも十数人が乗っている。皆、誰かの骨を探しに来たのだ。あちこちからため息が聞こえたのは、モニターに映し出された頭蓋骨があまりに大量だったからだろう。

 船内から遠隔操作でロボットを動かすが、なかなかうまくいかない。兄らしき頭蓋骨を見つけたと思い、近寄ろうとすると別の頭蓋骨に邪魔される。迂回するうちに目当ての骨を見失う。息子の頭蓋骨を拾いに来たと話していた隣りの席の男性は、早々に息子を探すことをあきらめたらしく、手近な頭蓋骨を拾おうと必死だ。

 私も「どれでもいいからね」と母から言われていた。けれど、兄の遺言なのだ。探さないわけにはいかない。

「お兄ちゃん」

 マイクに声をかけると、ロボットが光信号を発した。モニターを見つめるが、反応する頭蓋骨はない。必ず拾ってくれと遺言しておいて自分から出てきてはくれないなんて、相変わらず意地悪だ。どうして嫌いになれなかったんだろうと私は今さら自問する。

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