ホワイトウォッシュ(S、M、L、LL、3L)

「今日はいつものセーラー服でなくてごめんなさい。異世界テレパシーショッピング、ご案内するのはこんな格好ですが、ナナ=ビンテージと?」


「……急に呼び出されて不安を隠しきれないヤスダです」


「今回、クーヘン君は家にお化けが出たとのことで急遽お休みとなりまして、この懐かしい顔ぶれでお送りします」


「前々から聞きたかったんだが、なんであいにはあんな甘いんだよ」


「そりゃ、彼のチートがずば抜けてるからだよ。ヤスダ君のチートじゃあ、極めても人類を絶滅させるレベル、だけども彼のはこの星さえも消し去りかねない。その片鱗は君も見てきてるだろ?」


「……確かに、あれはデタラメだ」


「だから彼の方が上、それでもドクターの下だ。チートは危険性こそ少ないが応用が効いて便利で、かつ頭脳労働は変えがたい宝だからね。そして私が社長なのは可愛い、かつ女神だから、そろそろ楽屋ネタはおしまいにしてファッションチェックをお願いしたいんだけど?」


「わーー社長、ステキなお召し物ですね。ピッタリフィットな白のボディスーツ、まるでどっかの女忍者みたいじゃないですか」


「お! 良い勘してるじゃないか」


「え、コスプレなんすか?」


「コス、プレ?」


「あ、わからないならいいです。こっちの話で、知りたいなら後でクーヘンに、あいつの大学の卒論がそっち関連らしいので」


「そうなのか。まぁいいや。それでこちら私の着ているこれ、若干のネタバレもありましたが、実はこれ、こうして専用マスクを装着しますとほーらこのとおり。光学迷彩スーツなんです」


「あーー忍者、確かに忍者ですね」


「でしょ? このホワイトウォッシュ、肌に密着させるタイプなのですが腰にあるこちらのバッテリーを稼働させると最新光学迷彩が発動して、驚いてください、なんと! 姿が見えなくなるのです!」


「それは確かに忍者ですね」


「その隠蔽率、驚異の100%! これまでのテスト、およびお客様の声からは一切! 目撃者の報告が上がってないのです!」


「それは、え?」


「もちろん目撃者皆殺しにしたとかいうオチではありません。論より証拠! 実際起動してみましょう! みなさまの目で、ヤスダ君も、私の姿を探して見てください。もしも発動中に私がどんな格好してるか、言い当てられたなら、これまでの商品全てを一年分無料でプレゼントいたします!」


「社長、また台本にないことを勝手に」


「ダイジョーブ! 絶対に私の姿は見つけられませーん! それではいきますよー! 瞬き厳禁で! スイッチ、オーン!」


 ベカーーーーーー!!!


「ぎゃあああああああああああああ!!!」


「どうですこの輝き! このスーツの繊維一本一本が光ファイバーになってまして、全方位へ一切の隙なくこの光を放って影も残しません! 太陽とほぼ同じ光を照射し続けられるのです! この光なら雑魚ならそれだけで消滅します!」


「目ガァ! 目ガァーー!!」


「これだけ光っておきながら着てる私は一緒暑くないのです。エネルギーは全部光源へ! 更に通気性がよく、中は蒸れてないんです! もちろんエイ! こんなに飛んだり跳ねたりもできちゃうんです!」


「おい! これ冗談に! おい!」


「しかーしここまでは姿を隠してるだけ、完全なステルスとは言えません! この手の鉄板では音でバレるのがあるあるです。そしてもちろん、我々は対応しております。それがこちらのスイッチ、これをオンにしますとありったけの不快音が大音響で発せられます!」


「何おい待て!」


「それでは耳栓をしまして、スイッチオン!」


 ギリィギリィギャンギーーガッガガゲガガビガーガギリギギギーーギギギガギビギガーーーギギビーガーービビガガーギリィビギーーガギーキキキキューキギーガガガガギーーキュキュキーーーピーーーーギギキュキュキュキュキーピービーギリィギリィギャンギーーガッガガゲガガビガーガギリギギギーーギギギガギビギガーーーギギビーガーービビガガーギリィビギーーガギーキキキキューキギーガガガガギーーキュキュキーーーピーーーーギギキュキュキュキュキーピービーギリィギリィギャンギーーガッガガゲガガビガーガギリギギギーーギギギガギビギガーーーギギビーガーービビガガーギリィビギーーガギーキキキキューキギーガガガガギーーキュキュキーーーピーーーーギギキュキュキュキュキーピービーギリィギリィギャンギーーガッガガゲガガビガーガギリギギギーーギギギガギビギガーーーギギビーガーービビガガーギリィビギーーガギーキキキキューキギーガガガガギーーキュキュキーーーピーーーーギギキュキュキュキュキーピービーギリィギリィギャンギーーガッガガゲガガビガーガギリギギギーーギギギガギビギガーーーギギビーガーービビガガーギリィビギーーガギーキキキキューキギーガガガガギーーキュキュキーーーピーーーーギギキュキュキュキュキーピービーギリィギリィギャンギーーガッガガゲガガビガーガギリギギギーーギギギガギビギガーーーギギビーガーービビガガーギリィビギーーガギーキキキキューキギーガガガガギーーキュキュキーーーピーーーーギギキュキュキュキュキーピービーギリィギリィギャンギーーガッガガゲガガビガーガギリギギギーーギギギガギビギガーーーギギビーガーービビガガーギリィビギーーガギーキキキキューキギーガガガガギーーキュキュキーーーピーーーーギギキュキュキュキュキーピービー!!!!!!!


 ブッ!


「いやドクター、放送事故などあるわけないでしょ。これはテレパシーなんだし」


 ビ!


「あ、ヤスダ君、あーもう、本番中に気絶するとか、そんなんだから君は、もう」


 ビ!


「えーはい。お見苦しいところもありましたが性能はこの通り、一切の目撃者も残さないホワイトウォッシュ、サイズはS、M、L、LL、3Lの五種類から、万が一使用中に目撃された場合は全額キャッシュバックします。ご注文は今すぐ!」

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