第11話 状況判断
どうも昨日投稿した話、前書きしかなくて本編がなかったらしいです……それを一日経った今、コメントで気が付きました。いやこれは本当に恥ずかしい。何がしたかったんねんと自分で自分にツッコミを入れるほどに。
取り敢えず直しておきましたので、うん……いやほんと申し訳ない
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「トウヤ君の話では、魔物の出現速度は尋常じゃないという事だけど」
「少なくとも一時間の間に一つの階層に数百体が沸くぐらいには」
「くそ、それでいて敵がどんどん強くなってる……」
指示を終えたらしいギルドマスターの場所へ行き、俺は情報の共有をしていた。
「ダンジョンマスターやそれに準ずる者が直接操作していると見ますよ」
「ダンジョンマスターね……実際に見たことは無いけど、実在するのか」
「少なくともこれが自然の出来事である、とは断言できないですね」
そう。このスタンピード、迷宮の魔物が溢れるというのは、恐らくダンジョンマスターの企みによるものだ。
意図的な罠の配置。門真君達が狙われたのは、恐らく勇者だから。
俺が狙われたのは目だったからだろうが、どちらにせよ、意図的なものであると見れる。
でなければ、あんなピンポイントに罠を配置されたり、魔物が出現したりはしないだろう。
「ところで、迷宮内に突撃させたりはしないんですか? はやく殲滅しないと、魔物の数はどんどん膨れ上がりますよ?」
「迷宮内は通路だ。幅が制限された中じゃ、集団戦は危険すぎる。仲間同士の同士討ちも有り得るしね。殲滅力が高い人が少数で行くことぐらいなら出来るけど、そんな人達を防衛ラインから外す訳には行かない。そこまで切羽詰まってる訳でもないし」
「なるほど……」
ダメだ。俺には戦術的なものは分からない。高校生とかではなく、経験というものがまだ足りていないのだ。
もう少し考えれば多少の案は出るかもしれないが、状況がそうはさせてくれない。
「とりあえず君は前線に行ってくれ。冒険者ギルドともこれから連携を取らなくちゃいけないから───」
「どうやら、連絡のようですね」
ギルドマスターの言葉の最中に、部屋に不自然な風が吹き込んでくる。
風魔法の『エアボイス』だ。音の振動を操作することで、離れた場所にいる相手にも声を届けることが出来る魔法である。
恐らく前線にいる魔法使いからの連絡だろう。
ギルドマスターに届けられた魔法だが、俺は自前で風を操作し、声がこちらにも届くようにする。
『───ギルドマスターッ!!』
「どうしたの? 緊急事態?」
思ったより緊迫した声に、ギルドマスターも『エアボイス』で声を返す。どうやら単なる定期連絡ではなさそうだ。
すると、厄介な情報が飛び込んできた。
『迷宮前、第一防衛ラインが、突破されました!!』
「はぁ!? あそこには比較的高レベルの冒険者とか探索者とかが居たでしょ!」
『それが────魔物が迷宮の外に直接出現しだしたのです!!』
「迷宮の外に直接ぅ!?」
素っ頓狂な声をギルドマスターが上げる。
俺は傍から見てるだけだ。変に口を挟んでも俺じゃ役に立たないというのはわかっている。
ならばこそ、冷静に状況を把握するだけでもしておくのだ。
『また、一度に出現する数が多く、殲滅が間に合っていない状況!! そのため、前後からの攻撃に防衛ラインが瓦解。これから第二防衛ラインまで下がって、再度立て直すつもりです!』
「待って! 迷宮の防衛、包囲は一度放棄して住人の避難に人を回して! 住民に被害が出たら戦後処理が厄介だ!」
『しかしそれでは迷宮内の魔物も溢れ、現状の戦力ではどうしようもなくなります!』
「迷宮の方は私達が何とかする!
『しかし、冒険者ギルドの方とはまだしっかりとした連携が……』
「ノンちゃんにはしっかりと話つけとくから、取り敢えずすること! これは命令だ!」
『───りょ、了解!』
口早に、特に思考する時間がないにもかかわらず、ギルドマスターはそこまで指示をした。
上に立つ人間として状況把握能力や決断力に優れているというのは重要だ。それでいて戦力もある。
普段から何だかんだ言ってギルドマスターのことを下に見てる俺だが、今は間違いなく頼りになっている。
そして、俺も自身のやるべき事を把握した。
「トウヤ君、今の状況なんだけど」
「俺も聞いていたので把握しています」
「流石、話が早いね」
他者の魔法に割り込んだことに関しては突っ込まない方針らしい。
「私はノンちゃん……冒険者ギルドのギルドマスターと、今回の件の連携について話をしてくる」
「分かりました。それと、勇者に関してですが」
「君の使い魔がついて行ってるから大丈夫だろう?」
「いえ……まぁそうですね。最悪何かあったら連絡してください。魔力は隠蔽せずにしておくので、魔力感知で俺の居場所はすぐに分かるはずです」
「うん、そうして貰えると助かるよ」
俺の申し出はとてもおかしなものだが、まぁギルドマスターも理解者なので、疑問を抱くことなく頷く。
勇者、御門ちゃん達が少し気になるけど、周りにはベテラン探索者がいる事だし、大怪我をすることは無いだろう。
勇者の力の一つはスキルの豊富さだ。レベルはまだ成長し切っていないが、スキルの数に関しては多く保有しているはず。
それを加味し、更に高度な連携のできる8人で居れば、おそらく問題ない。
最悪俺が行けば、どんな状態であれ、
「それと、避難状況ってどの程度なんですか?」
「避難状況? ちょっと待って………街の外に避難できたのは外周部のみで、街の中心部の方はほとんど避難できてないみたいだね。そこの近くにも既に魔物が出てきてて、流石に混乱してるみたいだ」
ということは、泊まり木の宿、ラウラちゃんやルナ達はまだ避難が完了していないという事だ。
クロエちゃんにワンチャン賭けることは出来るが、この状況での運任せはダメだ。
俺の幸運は、あくまで不幸中の幸いを呼ぶものでしかない。
「知り合いがいるので、そちらを避難させてから向かいます。そんなに時間はかかりません」
「君ねぇ、さっきから色々と理由をつけて前線から離れてないかい?」
「そういうつもりはありませんが……先程勇者が怪我を負ってしまったので、それで慎重になってるところはありますね」
「そういうの、あまり気にしないと思ってたよ」
「むしろ人一倍気にします」
あくまで、気にするのが知り合いか他人かで分かれているだけだ。
知り合いが傷つくのは死ぬほど怖いが、他人が傷つくのは、最悪どうでもいい。
全て、テレビの向こうで死んだ人間程度の認識なのだ。
───それが薄情だと理解はしているが、昔からの思考というのはそう簡単に改められない。
「……まぁいいよ。君の実力は信頼しているし。ただし、急いでね? 今は結構危ないし、そんな中最大戦力である君を自由に動かせない私のストレスを考えてくれ」
「分身でもできれば良かったんですがね……戻った際にはしっかりと働かせてもらいます」
ギルドマスターからしたら、俺を前線に投入すれば、全て片がつくと確信しているようだ。
それなのに俺がなかなか前線に行かないとなると、確かにもどかしさはあるだろうな。
それでも、結局それはギルドマスターのことであって、俺ではない。
今はこちらが優先だ。
俺はギルドマスターに一度頭を下げて、宿屋まで転移をする。
「────やっぱり宿屋からは出てった後か」
視界が移り変わり、見慣れた宿屋へと着くが、そこは既にもぬけの殻。分かってはいたが、面倒な状況に唇を噛む。
とりあえず、せめてこの宿屋内であったことを知ろうと、この場に存在する魔力を解析する。
やり方は簡単だ。自身の魔力を、空気中に存在する魔力のものと全く同じものに変えて、同調させる。
更にそこから魔力の情報を読み取るということをするのだが、その魔力の情報を読み取るのがまた難しい。
(無駄な情報は処理して、必要な情報だけを的確に分ける……何度かやってるが、やっぱり結構ムズいな)
残存する魔力の
レベルか上がれば[禁忌眼]で過去の情報を読み取れるらしいが、あいにくそれはまだ出来ない。だから、魔力の記憶から読み取るのだ。
まずは情報を理解できるように解析、その後無駄な情報と必要な情報を分け、その情報を無理やり頭に叩き込む。
文字として情報を認識している訳では無いため、ただ必要な情報を見つけるだけでは、意味が無い。
だから、脳に直接情報を入れるのだ。そうすることで、初めて理解出来る。
これは恐らく、俺独自の技術。迷宮で経緯を理解していたのも、これによるものだ。
魔力の精密操作、性質変化、同調、解析、情報の判別に、理解するだけの思考能力や処理能力……自惚れではないが、これが出来るのが、俺以外に何人いるというのか。
「よし、終わった」
そんなことを考えつつ、およそ数秒で終了。読み取れるのは、ラウラちゃんやクロエちゃん、ルナにミレディは、どうやら4人で固まって行動しているらしいこと。
ついでに逃げた方角もわかったが、詳しい現在位置までは追うことが出来なかった。
如何せんこの街という広い範囲の中では、流石の俺も直ぐに見つけることはかなわなかったのだ。
高ランク冒険者や強い魔物の魔力が、戦闘中で魔法を使用したりするために周囲に拡散していて、微弱な魔力しか持たない人の魔力の詳細が読み取りずらくなっている。
そのため、ラウラちゃん達か確認するのが難しい。
クロエちゃんが比較的多い魔力を持っているのは知ってるが、それでもこの情報量の中では、選別が不可能だ。
ルナやミレディは治療の際に魔力をしっかりと解析しているが、それの識別も同様に難しい。
それこそ、ギルドマスタークラスに突出していなければ、パッと見で個人を見分けることは厳しいだろう。
だが、彼女達の安否の確認を諦める訳には行かない。
「こうなったら、
半ば強引だが、範囲は絞れている。その中の魔力反応を一つ一つ確認していくのが、今できる確実な方法だ。
そのついでに魔物も殲滅していく。そうすれば、前線の連中も幾らか楽にはなるはず────
ゴオォォォォン!!
「早い、な」
鳴り響く、何かが壊れる音。流石に誰かが遊び半分でやった訳では無いだろう。
迷宮から一キロほどは離れているここまで、魔物がきているのだ。
ここは中心部といえば中心部だが、それでも魔物がいるのはどうか。
それは魔物の沸く範囲が広いか、魔物の侵攻スピードが早いことを示している。
もし魔物がどんどん強くなれば、それこそレベル50やそこら程度では肉壁にもならなくなるかもしれない。
そんなヤツらが、無差別に徘徊するとなると……。
(───そうなる前に、全て片付ける)
外に沸いた魔物も、これを起こしている元凶も。
「そうと決まれば、行くしかないか」
俺は宿屋に、物質の相対位置を固定し、破壊されることを防ぐ時空魔法、『
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