第33話 やめて、私のために争わないで! ……みたいな?


 本当にすいません……第五章が終われば(また修正が入らない限り)今度こそ毎日投稿になれるので……


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 「ぜぇ、ぜぇ……御門マジ許さん」

 「はぁ、はぁ、ふぅ……アンタの、不注意が、いけないんで、しょうが……」

 「……ん」

 「はぁ、ふぅ、やー疲れたね飛鳥ちゃん!」

 「はぁ、はぁ、陽乃ちゃん元気だね……」

 「まぁね!」


 5人の試合が終わった後は、もう息も絶え絶えという状態だった。

 うん、デジャヴを感じるな。前もこんな感じだったんだけど、スタミナに気をつけてやればいいのに。


 「大丈夫?少し本気でやりすぎじゃないかな?」

 「はぁ、はぁ、トウヤさん、前の魔法を、お願いします……」

 「はいはい、『巻き戻しタイムバック』」


 俺が心配の声をかけると、飛鳥ちゃんがどうにかと言った様子で俺に嘆願してきた。

 仕方ないと苦笑いしつつ、前と同じ要領で魔法をかける。出来るだけ巻き戻すのは最小限にしつつ、体力も戻す。

 単純に体力を回復させる魔法も作れそうな気はするが、今はめんどい。めんどくない時はその場で作るくせに、一度めんどいと思うとその後も延ばし延ばしになってしまう。


 人間とは実に面倒な生き物よの、と達観してみるも、何言ってるんだと思うだけである。


 「少しは体力配分考えてね」

 「ふぅ~、すみませんトウヤ君。ちょっと、熱くなりすぎちゃいました。テヘッ」

 「御門さん、可愛くやってみせてもダメだからね?」

 「あ……い、今の可愛かったですか……?」


 テヘペロをする御門ちゃんに俺がそう言えば、可愛いの部分で照れる御門ちゃん。そこを聞いて欲しいわけじゃなかったんだけど。

 というか、御門ちゃん態度変わりましたね。

 態度が軟化したというか、チョロくなった? 可愛いの部分だけピックアップするなよ。


 まぁ、運動したから疲れてるのかな。それともストレスが発散できたからだろうか。一応気分としては良好そうなのでよかった。


 後、凄いどうでもいいけどテヘペロが上手く出来るのはアドバンテージだと思うのは俺だけか。テヘペロ難しいしな。ウザイと思われないように、かつ可愛くできる御門ちゃんは本当に凄いと思う。これが大人になっても継続してたら驚きだな。

 ちなみに樹が前にやったことがあるのだが、ついつい殴ってしまうぐらいにはウザかったとだけ言っておこう。所詮男にテヘペロは無理なのだ。


 「さて、次は誰がいい?飛鳥ちゃんは魔力の関係上先にやったけど、次は誰でもいいよ。そんな気力があるならだけど」

 「じゃあ私が───」

 「トウヤ君、次は私でお願いしますっ」

 「紫希、横入りは良くない……」


 俺がそう言えば、まず雫ちゃんが手を挙げようとして、次の瞬間には御門ちゃんが間に割って入った。

 不満そうに告げる雫ちゃんの気持ちもわかる。御門ちゃんのは明らかすぎたしね。まぁ、俺としてはそうやって望んでもらえるのは凄い嬉しいけど、頼むから仲違いだけはしないでくれよ。


 「異議あり! 紫希ちゃんは朝にトウヤさんと会ったんだから、私か雫ちゃんが最初で!」

 「ちょ、陽乃、それは関係ないでしょ?」

 「紫希は朝に幹と一緒にトウヤさんと十分やったでしょ? ならここは友人として譲るべき。世の中は常に平等に見えなければならないのだから、公平を求めるのは不思議な事じゃない」

 「難しい事言ってるけど、公平でしょ十分。朝はたまたまであって意図的なものじゃないんだからさ」

 「そこまで計算してやったんじゃないの?」

 「んなわけないでしょ!」


 更に陽乃ちゃんが会話に参加すると、途端勃発する論争。

 誰が正しいことを言っているのかは、まぁ俺からはとても審判することは出来ないが、最初に声をかけてきたのは雫ちゃんだから、もうそこで話を決めてくれと思う。

 御門ちゃんが折れるか、2人が御門ちゃんに譲るかのどちらかだな。


 『やめて! 私のために争わないで!』という言葉が脳裏を過ぎるが、ないないと首を振る。

 そんなことをした日には炎上間違いなしだ。ツイッターのネタだけにしろって話。しかも俺男だし。あれは自分に酔ってるヒロインだけでいいわ。


 「女子は話がつかないみたいだし、ここは間をとって俺がトウヤさんと最初に訓練───」

 「アンタは黙ってなさいよ」

 「寛二君は最後で」

 「寛二、空気読んで」

 「……はい」


 それを見かねて場を収めようとしたのか、はたまた単純に最初にやりたかっただけなのか野村君が声を上げるが、それは叱責でも怒りでもなく、ただただ冷たい声音で3人から口撃を受けて敢え無く轟沈した。

 まぁ、男子は女子には勝てないんだよ。一瞬で団結したもんね今。その協調力を持って譲り合いの精神を出せ。


 「まぁここは話し合いじゃ平行線っぽいから、ジャンケンでいいんじゃないかい?」

 「むぅ、トウヤ君が言うならそれでいいです」

 「じゃ、そういうことで」


 とはいえ、話はつきそうにないので俺は無難にジャンケンを提案する。

 そんな俺の提案に不満な顔をしながらも、渋々頷いた御門ちゃんは、雫ちゃんと陽乃ちゃんの方を向いて、ジャンケンを始める。

 まぁ、この世界に来て戦ってきたのなら、ジャンケン程度なら動体視力と反射神経にものを言わせて、相手が出した直後に出すということも出来なくはないから、完全に運とは言えないが。

 それを証明するように、3人の目は何一つ逃さんとばかりに見開かれている。

 俺は一応運に賭けさせようと思ったのだが……まぁ3人のスペック的に同じぐらいであることを願おうか。


 そうして満を持して『ジャン、ケン、ポン!』の合図で出された結果は……



 御門ちゃんがパー。

 陽乃ちゃんもパー。

 そして雫ちゃんもパーで、あいこ……かと思われたが───




 ───少し外側から出ている野村君の手がチョキを示していることに気がついた。


 「お? よっしゃぁ俺の勝ち!! ヤッホー!!」

 「は…………はぁ!? なんでアンタジャンケンに参加してんのよ!!」

 「こーへーだろこーへー! 悪いけど俺が最初だな!」

 「こんのっ、寛二の癖にぃ……」

 「空気読めない」

 「寛二君ほんっと最低」


 結局、ジャンケンはいつの間にか飛び入り参加していた野村君の勝利となり、俺と最初に訓練するのも野村君となったのだが……

 君、女性陣からの信頼が失墜してるけど、いいの?君そんな熱血タイプなのか?


 まぁ、彼は彼なりに考えたんだと思おう。仲違いしないように、彼が仲裁したのだと。

 じゃなければ、本当に彼はただの生贄でしかないぞ。


 「トウヤさんお願いしまっス!取り敢えず格闘の相手してくれるだけでいいんで!」


 そんな当人は、背後から怨嗟の視線を受けながらも、一向に気づかない様子でボクシングの構えをとった。


 ……ポジティブな性格が幸いしてるよね、ホント。


 苦笑いをこぼして俺も軽く構える。とはいっても、別にボクシングとか空手とかやってた訳じゃないし、構えは足を引く程度だ。

 良くあるだろ?隙だらけの格好なのに、『隙が見当たらない!?』みたいなやつ。あれを目指してます。


 取り敢えずは野村君の動きを真似させてもらいつつ、どこが悪いかを直すのと、恐らく縛られているであろうボクシングのルールから、どうやって離れさせるかも考えていくかな。

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