クリスマスパーティー3
「ただいま~」
「おかえりなさい、あなた」
「樹、お前いっぺん紐なしバンジージャンプしてみる?」
「間接的な死への誘いは流石にやめて」
お前のは直接的な精神攻撃なんだが? 俺の精神に多大なダメージが入るんだが?
「お、速いな。もう帰ってきたのか」
「あ~違う違う。荷物が多いから一旦置きに来た」
遅れてリビングから来た拓磨にそう答えて、荷物をドサりと床に置く。
「悪いが、俺たちまた行ってくるんで、食品を冷蔵庫に入れておいてくんね? 適当でいいから」
「了解だ。飯は先に食っててもいいか?」
「別に構わないが、レンジの場所はわかるか?」
「嫌でも目に入るからな」
キッチンへ行けばすぐ目の前にあるもんな。というか樹は何回かこの家に来たことあるからわかるか。
出る際に「そういや多分マ〇ク買ってくる」と樹に伝えたら、なんか「ヒャッホー!」って言いながら飛び跳ねてた。テンション、高いね。
「ごめん、待った?」
「全然、今来たところだよ」
「……ノリが良いわね」
外で待ってた2人の元へ、お約束の言葉を投げかけつつ行くと、叶恵が見事に返してくれる。俺的には先に待ってる立場の方がいいんだが、致し方ない。いつか絶対デートで言ってやるもんね!
「美咲も、待たせちゃったか?」
「……別に、今来たところよ」
何となしに振ってみたが、ちゃんと乗ってくれた。この少しツンデレな感じが何とも言えん。というか2人に言ってたらデートじゃねぇし。
「将来彼女を作るならツンデレな女の子がいいなぁ」
歩き出して、俺がポツリと呟くと、すかさず叶恵が拾った。くるりと俺の前に躍り出ると、前かがみで俺の顔を笑顔で見つめてくる。
「刀哉君を殺せば一つになれるから、ずぅ~っと私と一緒だね。それって、とぉっても素敵なことだと思わない?」
「……それはツンデレじゃなくてヤンデレだ」
「……叶恵、それはちょっと……」
「アレ? そうだっけ?」
恐ろしい。潜在的なヤンデレを俺は目覚めさせてしまったのかっ……!?
というか今のは勿論何かの引用だよな。流石に今考えたことじゃないよな? 現実世界であのセリフを素で言うとか恐ろしすぎるんだけど?
叶恵の方を見れば、ニコリと笑顔を向けられる。「えへへぇ」と言っているが、何が嬉しいのだろうか。俺には分からない。
さっきの事もあって、俺にはそれがどうしても寒気がする笑顔にしか見えなかったのも、理由の一つなのかもしれない。
◆◇◆
「〇ョイフルって、いまだに私どこに何があるか分かってないわ」
「安心しろ。俺もダ〇ソーとマ〇クと本屋の位置しか完璧には覚えてないから。というかそこ以外あんまり行かない」
「あ、私ゲームセンター行ってていい?」
やって来たのはジョイ〇ル本田。隣にはニコ〇ールが隣接している場所だ。
一応ここには飾りとマ〇クを買いに来たのだが、叶恵の一言は何とも残念臭を漂わせるものだった。
天然もここまで行くと最早凄いなと俺は感心、そして学校の男や樹達にバレないことを祈った。
まず行くのはダイソー。叶恵をゲーセンに行かせるか迷ったが、美咲が付いていったので行かせた。美咲が居れば変なのに絡まれても大丈夫だろう。
というか、美咲もゲーセンに行きたかったようで、少し笑顔だったのは本人のためにも見なかったことにしておこう。
ただ代わりに俺は1人になってしまったので、喋り相手がいなくて寂しい。さっきまで居たのに急に居なくなると、ここまで喪失感があるのか。
少し暗い気持ちで、クリスマスツリーに飾り付けるあの色々な色がある丸い玉みたいなやつと、てっぺんに付ける星と、雪を模した綿を購入。
それに加えて、あの、えっと、なんだっけな。あの点滅しながら光って、クリスマスの時に家の周りとかクリスマスツリーに付けるライトの名前。クリスマスライト?
まぁいいや。それの10m用のやつを2本買う。
「まだ2人はゲーセンに居るっぽいな…〇ックを先に買ってきちゃうか」
一応2人の携帯に、マ〇クの方にいる主旨を連絡。ついでに何が欲しいかも聞いておく。
拓磨と樹は確か『テリヤキバーガー』と『へーほんほへ〇はい』だったか。へーほんほ〇ほはいって、『ベーコンポテ〇パイ』だよな、確か。それとポテトとナゲットか。
俺は無難にポテトとチーズバーガーでいいか。
「あぁ、ここもクリスマスイベントですか……」
マッ〇でもクリスマスイベントをやっている模様。どうやらカップルで行くと、サンタの形をしたナゲット1箱が貰える模様。しかも無料。流石リア充限定イベント。
だが、う~んと唸る。なんせゲーセンに2人は居るし、これだけに呼ぶのもアレだ。それにカップルって行ってるし、美咲と叶恵両方を連れていくことは出来ないだろう。だからといって片方だけ選べば差別になるし……。
いや、まぁ考えすぎなのは分かってるんだが、2人とも意外と繊細だからな。何で傷つくかわからないし、ここは諦めるか。
サンタ型ナゲットを求めてやってきた
知り合いの女の子が途中で来て一緒に並んでくれるのを夢想したけど、そんなのあるわけねぇんだよコンチクショウ。
なお、美咲と叶恵はポテトだけでいいそうで、結果五人分にしては随分と少ない量となった。
「あぁんもう! 一回ミスしたわ!」
「み、美咲ちゃんストップ……」
……あれ? 何やってんすかね?
こう、知り合いを見つけたと思って声かけようとしたら全然違う人だったみたいな感覚に陥ってるのだが。熱中して太鼓〇達人をやる姿は、確かに別人。
「お、お~い……」
「ちょっと待って!私もう一回チャレンジするわ!」
「ガチ勢じゃねぇか!」
一体俺がいない間に何があったんだ!?
という、貴女がなっているのは裏鬼では? ガチ勢とまでは行かなくとも、それなりだぞ。
隣にいる叶恵を見てみるも、フルフルと首を振るばかり。つまり、たまたまハマったということか。
~~~♪ ~~♪
流れる曲はサウザンドチェリーブロッサムという、某音声ソフトの音楽だ。俺も結構聞いていたから知っているが、やってるの裏鬼だよね?
まぁね、初心者向けだとは思うよ。太鼓〇達人とか最後にやったの中学の頃だけど、最初にフルコンボしたのはこれだった気がするし。というか普通にやるんじゃなくて、頑なにドロロンと4倍速でやってたからフルコンボまで数日かかったんだろうが。
せめて譜面を覚えてから出直してこいと。
いやそんなことはともかく、何気に今のところコンボが途切れていないのが凄い。Cメロ入った時点で455コンボだから、多分一回もミスしてない。
ただしここからが難しい。カドドカ、カド×4の後に、カドドカ、カドドカドドカ、カドが入って、長いやつが出てくる。
しかし、そこもフルコンボでやり通す。マジで何者ですか美咲さん。初心者ですよね?
結局そのまま最後までフィニッシュ。見事『1000コンボだドコ~!』という声を貰い、百十万点を確保。文句無しの1位だ。
「……はぁ~、腕疲れるわねこれ」
「いやはや、美咲さんの意外な趣味発見ですね」
「あ、ち、違うのよこれは!」
俺の姿を認めた美咲に、「何が?」と聞くと、黙り込んでしまう。しゅんとなった姿は、普段の凛々しさと比べるとギャップを感じる。
凛々しい、というより、なんか今日は驚いてばっかりな気がするが。
「叶恵の付き添いのはずなのに、叶恵が付き添いになってんじゃねぇか」
「私、途中まで太鼓〇達人やってたんだけど、美咲ちゃんに一回貸したら、ハマっちゃったみたいで……」
「みたいだが、弁解は?」
「うぅ~、その、私が悪かったわ」
別に謝罪を求めていた訳では無いのだが、しゅんとした姿が可愛いので許す!
「あ、どうせだから刀哉君も一回やってく?」
「さっきの今で勧めるのな。まぁ1回ぐらいならやってくか……」
何気ない叶恵の勧めに、俺はチラリと美咲を見て、100円を筐体に入れる。
サイフからいつも使ってたカードを取り出し読み込み。ろくにカスタマイズなどしていないせいで、初期装備のままのドコちゃん。
「やっぱりやったことあったんだぁ」
「なんだ、わかってて勧めたのか?」
「刀哉君ってゲーム上手いから、上手い人のプレイを見ておこうと思って」
「……美咲は既に中級者にはなってるな」
「え? そうなの?」
あ、本人無自覚ですか。
頭にハテナを浮かべる美咲に、俺は思わず苦笑い。多分自分がやってるやつが最高難易度だって知らなかったんだろうな。
というか、裏鬼の存在はどうやって知ったのだろうか。あれ絶対初見は気づかないと思うのは俺だけか?
そんなことを考えつつ、まずは準備運動もかねて、サウザンドチェリーブロッサム、ドロロン、4倍速、気まぐれで行きますか。
というのも、後ろに二人がいるから凄いところを見せておきたいって言うのが本音。太鼓〇達人とかゲームあるあるで、誰か人が見てると、敢えて難しいものをやって凄さを見せつけようとするやつ。
『始まるドコ~』
気の抜ける声が入り、そして始まる
「嘘!?」
「み、見えない!?」
始まった瞬間に後ろ二人組が声を上げる
そりゃそうだ。ドロロンで音符が見えなくなり、4倍速で音符の下にある文字も見えなくなり、気まぐれで記憶など意味をなさなくなっている。
通常なら無理ゲー。しかし、俺には出来る。動体視力と反射神経、そして瞬間的な把握能力に絶対的な自信がある、この俺ならな。
ぶっちゃけると、出来るというか、中学の頃から出来てた。だから出来ることはわかっているのだ。
サビへと突入してるが、ミス0。気まぐれだから、俺は4倍速で流れる文字を一瞬で識別しているわけだ。
これ(ドロロン・4倍速・気まぐれ)のフルコンボ専門で、俺もユーツーブ───動画投稿サイトのことだ───に手元動画をいくつかあげたことがあるのだが、視聴回数が驚くべきことに。なお、ドロロンは無しの方が、見ている者にとっては楽しいらしい。何でも、わからない人からすると何が何だかとか。
とまぁそんなわけで、今回も無事フルコンボとなりました。ミス0、可も0。全良で1位を奪い取る。全良した上で連打を俺より上に行かなければ1位は取れまい。
「ふぅ……目が疲れるな」
少し集中したせいか、視界が暗くなっている気がする。一応放っておけば治るのだが、立ちくらみみたいな感じになっている
「と、刀哉君凄い……」
「まさに別次元ね……」
「まぁな。これは慣れと言うよりは体を鍛えなきゃ無理そうだが」
4倍速の文字を完璧に捉え、瞬間的に把握し、反射的に叩くという行為は、天性のものじゃないと無理な気がするが。
その後、相変わらずの設定で、柔らかタンクをやった後、通常の無設定状態で混沌の時間をプレイ。両方共フルコンボだ。
そんなこんなで、あんぐりと口を開けている2人を現実に連れ戻し、帰宅した。
こう、凄いと言われたいが一心にやったが、正直変な一面を見られてしまったかもなと。
明らかにイキってたというか……まぁ、2人は素直に賞賛してくれたので、よしとしよう。
ただ、次からは気をつける形で。
◆◇◆
家に帰ってきた時点で、時刻は1時となっていた
拓磨と樹は先に飯を食べていたらしく、現在は大乱闘にハマっている。もちろんゲームの話だ。リアルで乱闘をしていたら、俺も参戦せざるを得なかっただろう。
「全く、ゴミぐらい片付けなさいよね」
「あ、悪い悪い」
「美咲、悪いが片付けといてくれないか?」
「これがゲーマーね。子供のゴミを片付けさせられる親の気持ちがわかった気がするわ」
そう言いながらも結局片付けている美咲は、やはり面倒見がいいというか。母親タイプだな。
てか、『これがゲーマーね』って、さっきの美咲は完璧にゲーマーの一員だったじゃねぇかとツッコミたい。だけどやぶ蛇な気がするので断念。
「喰らえ! スマッシュ!」
「はん! その程度の攻撃は見切っている。学校一の頭脳を舐められては困るなァ!」
学校一の頭脳をどこで発揮してるんだか
「学校一の頭脳をどこで発揮してるんだか」
俺が考えていたことと全く同じことを美咲が言った。気が合いますね。
なお、叶恵はやりたそうにしているが、一応最後の一線みたいなものはあるのか、我慢している。樹と拓磨の前じゃ見せないのね。別に俺達の中でならいいと思うんだが。
そう思い助言しようとしたが、どうやら必要なかったらしい。もう我慢ができなくて2人に「次やらせて!」と頼んでいる。
あぁ、だが叶恵。樹にそんな近寄ったら、緊張してプレイできないんじゃねぇの?
案の定、ガチガチとまではいかないまでも、叶恵の方を気にした樹は先程までの動きはどこへやら、回避ができずにそのままやられてしまった。
「全く、相変わらずだな」
「やめてくれ。頼むから何も言うな」
自覚はあるようで、樹は複雑な表情で首を振る。ただその場所から動くつもりは無いようだ。
リザルト画面を終了した樹達だが、そこで俺は、帰ってきてからずっと気になっていたことを聞いた。
「さて、終わったところでだが、クリスマスツリーは?」
「「あっ」」
樹はともかく、真面目な拓磨が居るから大丈夫だと思ったが、この集まりになると、こいつはポンコツになるんだったな。忘れていた。
こいつらに何か頼む時は、気をつけよう。
◆◇◆
「ほぇ~」
「マジでデカイな」
「だから言ったろ?」
優に3mはあるでかい木。なお、クリスマスツリーである。
リビングの天井が2階まで吹き抜けになっていないと入らない大きさのこのツリーは、斜めに階段下の物置に置かれていた。
確か去年か一昨年……一昨年だな。その時に買ったやつだった気がするが、結局デカすぎて出すことは無かった。
その封印が今、解かれたのだ。
「重っ!?」
「そりゃ限りなく木に近い偽物だからな。内部まで精巧に作られているんだろう」
「美咲、叶恵、リビングの扉開けてくれ」
「うん」
男3人で持ち上げても重いツリーを、横にして持っていく。リビングは吹き抜けだが、それ以外は2m50ぐらいの、普通よりは高いものの天井があるので立てることは出来ない。
どうにかこうにか扉に通し、やっとのことで立てたツリーはメチャクチャでかかった。何せ脚立が必要な程だ。てっぺんに至っては少し離れないと見えない。
「絶対家庭用サイズじゃないよな」
「なんか外に飾られてるような大きさだよね」
最もで。それは外用のツリーなんだよ。今になって思い出した。
外用のツリーなら外にすればよかったやんと思ったが、またこれを持つのは勘弁なので歌えないでおこう。
「そういや飾り付けは?」
「買ってきたぞ。ほれ」
様々な飾りが入った袋を樹に投げ渡す。ガラガラお音を立てながら、袋は見事樹の手にわたる。
「おっと危ねぇな。どれどれ……」
「お、これなんて名前だっけ」
拓磨が取ったのは、あの丸いヤツ。
「オーナメント?」
「あ、そんな名前だったのか。よく知ってたな叶恵」
「ううん。これに書いてあった」
叶恵はそう言って、丸いヤツの裏側に張り付いている値札を見せる。
うん、書いてあったわ確かに。
「これもオーナメントに入るのか?」
拓磨が次に取り出したのは、拓磨の手より少し大きいぐらいの雪だるまの装飾品。
「さぁ? オーナメントがその丸い球体のことを言うんだか、ツリーにつけるものを言うんだか、定義がわからんし雪だるまとでも言っときゃいいんじゃねぇの」
「それもそうか」
そう言うと、それも取り出して床に置き、どんどん出していく。
「これは……リースか」
「そんな思い出せないような名前か?」
「クリスマスパーティーとか小学校の頃が最後だからな」
「名前も忘れちゃうのかよ」
確かに俺もリースの名前が出てこなかったけどさ。
「この綿良いなぁ。余ったら頂戴?」
「子供か!」
でっかい雪を模した綿を抱きしめながら言う叶恵。その手は少しずつ綿を千切っている。少しならいいがあんまり細かくするなよ?
「あら、このクリスマス用ライト、長いわね」
「え? それそんな名前なの?」
「知らないわよ。私が勝手にそう読んでるだけ」
コードにライトが付いたのを取り出しながら、美咲が言った。クリスマス用ライト、安直すぎるだろ。
にしても確かに10mは長かったかもしれん。しかも二本あるし。いや、クリスマスツリーの全体像を見たら丁度いいのか?
その後、脚立を持ってきて、早速飾り付けに取り掛かる。なお、お約束として一番上につける星は一番最後だ。
「全体的に少し右寄りよ。左の方にオーナメント一つ」
「オッケー」
美咲と叶恵も結局手伝ってくれている。曰くやることが無いらしい。
美咲には主に少し離れたところからツリーの全体を見てもらい、飾り付けに偏りがないようにしてもらっていて、叶恵にはオーナメントを付けてもらっている。
「ヘイ雪プリーズ!」
「へいお待ち!」
ここ、俺の『ヘイ』と樹の『へい』には少し違いがある。俺のは外国人風、樹のは元気のいい店長風だ。
ごめん、すっごくどうでもいいな。
樹から雪を貰って、飾り付け。俺は千切った雪の飾り付けで、樹は雪を千切る役。拓磨は長いままの雪をツリーに付ける役割だ。
「ちょっと左の雪が足りないわ。刀哉君」
「りょーかいりょーかいっと」
「叶恵、一旦雪だるまに変えて」
「うん分かった」
凄い、まさに指揮官だ。これがクリスマスツリーの大会かなんかだったら、間違いなく優秀賞だぞ。
そんな指揮官の下、凡そ1時間をかけて、クリスマスツリーの飾り付けは最後に差し掛かった。
「よし、最後だ。やりたい人ー」
「「「「はい!」」」」
「だよなー」
てっぺんに付ける役は、たとえ高校生になってもみんなやりたいらしい。拓磨と美咲も参戦したのは意外だったが。
ということで、ここは公平ということでジャンケンになった。
「ジャンケン……」
「「「「「ポン!」」」」」
結果は、拓磨と叶恵がチョキ、樹と美咲と俺がグー。
「まぁ、何となくわかってたが……残念だな」
「刀哉君、もし勝ったら変わってくれない?」
負けた拓磨は苦笑い気味に良い、叶恵に至っては上目遣いでお願いときた。そんなにやりたいのか? 星の飾り付け。
ただ叶恵の上目遣いは破壊力抜群で、俺に生唾をゴクリと飲ませるには十分な攻撃力を秘めていた。
「……」キッ!!
「……次、行こうぜ」
そんな時、美咲の鋭い眼光を背中に浴びた俺は、一瞬身体を震わせながら、それでも声を出すことに成功した。
あれなんだよ、目線だけで人殺せるんじゃねぇのって思っちゃうな今のは。
「さ、行くぞ。ジャンケン……」
「「「ポン!」」」
俺、チョキ。樹と美咲、パー。
「っしゃ!」
「そ、そんな……」
「こんな、道半ばで終わるの……?」
まて、美咲の悲しみ方の方向がおかしいんだが。
だがしかし、俺が勝ったという事実に変わりはなく、見事星は俺の手へと渡る。
「「「「………」」」」
「なのに……なのになんでこんな罪悪感に潰されそうなんだよ!」
絶対的に背後からの無言の視線ですねはい。
「……はぁ、分かったよ。全員で付けようぜ」
「ほ、ホントか!?」
「マジ!? よっしゃ!」
「男に二言はないわよ、刀哉君!」
「やっぱり私のお願いが効いたね!」
観念した俺の言葉に、四者四様の喜びようを見せる。てかおい叶恵、お前何さりげなく私がやったみたいな事言ってんの? それとは無関係に言ったんだが。
新たに4人分脚立を持ってきて、全員で星を掴むという異様な光景。だが、確かにこっちの方がいいのかもしれない。
「んじゃ、行くぞ」
全員でゆっくりと星をてっぺんに持っていき、そして……。
「クリスマスツリーの」
「「「「「完成!!」」」」」
無事に完成したクリスマスツリー。とっても高いクオリティのこのツリーは、しばらく飾っておくことにしよう。
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