幕間 栄光を司る罪過の金貨

 一つの終わりを紡いだ文章がある。

 碑文コード 勇者

 預言指定 禁断書庫


 閲覧権限 飛翔同盟の認定者のみ


 勇者、正式名 川守新開 父 川守大海 母 峰ヶ島陽子

 精神的面 一国の王にさえなれる能力を保有しながら他者に依存することでしか生きていけない。目的が無ければそのまま野垂れ死にするような男。


 それが勇者新開を端的に表したときの状態であった。


 高次元演算装置、峰ヶ島ブランドの傑作の一つ。ある程度の情報とその人間のDNAを読み取りその行動を預言する預言機によって彼の後の行動が演算された結果。


 川守新開


 これから後、魔王を上回る安定の破壊者として君臨する男となる。


 それが出雲に刻まれた彼の抹殺の決定付けた情報だ。

 誰もが彼の行動に安定が含まれないなんて思わなかっただろう。誰もが嘆いた、だが彼らはその為に戦ってきた安定を転換期で狂った世界を元に戻す事であったのだから。


 魔王との戦いのように彼らは武器を抜いた。


 それは魔王戦争から三日後、その功労者達は彼の殺害を実行する。


 梅雨時の日、激しく雨の降る日に地獄は始まった。


 当たり前のように、勝利の余韻に酔っていた勇者や、他勝利、凱旋、名代、八幡、久慈の勢力のリーダーは、ようやく訪れる平穏な日々に、乾杯の声を響かせていた。


 そんな中起きたのだ地獄は。


 切断の力場が仲間を塊に変えた。一瞬で平穏は消え去ったのだ。


 地獄が始まる。

 誰もが笑える程に滑稽な噴水に変わり、部屋にいた全ての勢力のリーダーは、細切れになり屍をさらした。


 勇者は無意識のままに、力場を駆動させ当たりに暴威を振るうが温い。

 一つの土地が更地に変わるが、仲間の死体を辺りに散布したに過ぎないのだ。


 だが、彼は一瞬気を抜いてしまった。敵が存在するその場所で。


 彼の頭に、糸が打ち込まれる。賢者の武器精神解体である、これは脳の命令を強制的に書き換えしまうブレインクラッカーである。


 書き込む命令により時間が変わるなど、色々な問題が有るが、この瞬間刻まれた命令は、出雲宮からの永久撤退、そして仲間を殺すな。


 一瞬の悪寒と共に、彼は、力場を辺りにぶちまけて逃げ出した。


 それからは早い。

 勇者派と、三王派に別れての逃亡劇だ。


 勇者は仲間を殺せないただ逃げるだけしか出来ないのだ。


 抵抗は無くただ仲間が減っていくだけ。

 もう終わりは近いのだから。必死に逃げる勇者、最後の仲間はかつての仲間だけ。


 そして、物語は始まるのだ。彼が空を割りその名を轟かせる時に、負け犬の遠吠えの様な惨めな勇者の物偽りが。

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