白鞘の中で眠るように
玄米茶
それは二年前から
刃が納められる、静かな静かな音。それは機能的というには不思議な鞘、握りの部分は・・・・・いや鞘にいたる全てが木で作られた休め鞘で呼ばれるその使用には果てなく遠いその刃の休める場所。
だが納めたということはそれまでに刃は動いていたと言う事。
床は赤く染め上げられた赤黒い血の池、そこには少年と死体が二つ相対するように向かい合っていた。
「たのしかったなぁ」
死体のはずのそれは嬉しそうに笑う、
「たのしかったねぇ」
少年もまた同じように、その二人の一時がすばらしきものだったと歌う。その二人は家族、その二人は師弟、そして今は同等たる実力と褒め称えるべき勝者と敗者、決着を迎えた古びた道場ではその二人が死ぬ間際まで称え合う。
「死ぬまで平然と言うのは辛いが、それ以上に孫の成長を祝うとするか。わしはどうせ後二分と持たんのだ、よくその身にしてその無才がその刃を持ってわしの領域までよくいたった!!」
「別にたいしたもんじゃない。ただもうこの業しか残っていない残さない、僕は爺さんさえ業にしてこの業で到る、とっくに剣にうずもれて死ぬ覚悟は出来たんだよ。ならば親父や兄貴に劣るはずは無い。この身はすでに生きて死ぬのは全てこいつと一緒だ」
年相応とは言いがたい凶器を彼はまとい轟々と燃え上がる。冬という季節とその死闘の二つをあわせ彼は白い蒸気を上げながらその凶器を身に宿しながら煌々と笑う。
それがまるで燃え上がるようで、明かりを照らすようで、その凶器を見る肉親はいっそうに嬉しそうに笑っていた。
二人の狂鬼にして剣鬼は、楽しいと、楽しすぎるぞと笑う。
「羨ましい、羨ましいぞこの大馬鹿が、まだ剣に生きるか・・・・・、まだ生きていくのか羨ましい。わしはお前という剣鬼を作ってそれでしまいなようだがなぁ」
「羨ましいだろう、いくらでも逝ってやるどうせもう僕には剣しかないんだからな。この業で生きていくさ、この魔法が全盛の時代で、世紀すら遅れたただの刃狂い、どこまででもいってやるさ」
いつの間にか事切れ声さえ聞こえないのに少年は笑う、戦略級魔法が全盛の時代、剣で戦う時代は当に過ぎたその世界。
―そしてそれからいくつ時が過ぎたか・・・・・・・
広大世界 魔導王国 アーゲンベーバーレ
最も優れた魔術戦闘の専門家たちが集う最強の軍事国家、少年はそこにいいた。もち手を選ばぬはずの刀を引っさげて、それでも今の時代では必要の無いその業を持ち、その戦場に降り立つ。
「さて、はじめようか」
その鞘から刃が現れる、休むことを終了した証。二度と鞘に戻さないという証明を加えるために、白木の鞘を投げ放つ。
魔術が現れては消えるようにして大地をえぐりながら少年は戦場をかけていく。
とても楽しそうに、その大地を跳ねながら、人々の静止をまったく無視して。その魔弾の地獄に少年は駆け抜ける、この戦場である一線以外全て魔術師に劣るその無才の剣術使い、だがもう二度と収まることの無い鞘が楽しそうに地面に転がり。
光が世界を断ち切った
そして暗幕、世界は闇に包まれ―――――光が差し込む。
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