襲撃者ノイズ
しかし、何故少年達は丁度いいタイミングでアジトに踏み込んだのだろう。周囲の警戒をさせつつ、待機するようベルシャーが指示を出していた筈。
アジトの内部から何かが外へ出ていったとでもいうのだろうか。中からは見えない何かを察知し、突入へ踏み込んだのか。その真意を少年達に尋ねる。
「お前ら・・・何でアジトに入ってきた?待機の指示を出してた筈だが・・・」
三人はアジトの内部を巡り、痕跡や誰かいないかを探る。少年達に投げかけた問いからは、ベルシャーの想像していなかった意外な返答が返ってくる。
「サスキの姉さんから連絡がありまして・・・」
「おい、オメェら・・・まぁいいか。何だってお嬢から連絡が?俺にはなかったぞ」
彼らの会話の中で出てきた“サスキ“と呼ばれる人物は、シンを初めてアジトへ連れてきたパワードスーツを身に纏った女性のことだった。他にもベルシャーがアジトで白獅と会話を終えた後、部屋の入り口で彼に声をかけた人物でもある。
「最初にアジト付近で気配を探知できたのが、僕らだったようですよ?」
「それにベルシャーさん、戦闘中だったし・・・。気づかなかったんじゃないスか?」
「はぁ〜ん・・・なるほど。で?内容は。さっきの奴のことか?」
「ええ、まぁ・・・。内容はそんなところです」
「アジトが襲撃されたってんで、何人かのメンバーさん達が迎え撃ったらしいんスが、これがえらい強敵だったみたいで・・・」
直接手合わせをしたベルシャーには、それがよく分かった。決して手を抜いていた訳ではない。意表を突かれたとはいえ、できる限りの全力で迎撃に当たったつもりだった。
しかしあの不気味な男は、息一つ乱すことなく尋常ならざる動きでベルシャーを翻弄し、窮地に追いやった。二人の少年達が入ってこなければ、もっと危険な状況になっていたかもしれない。
その点に関しては、ベルシャーは少年達に感謝していた。だが、それを言葉にすることはなかった。
「だろうな・・・。実際、とんでもねぇ奴だったし」
「それで、人員の命を最優先にして別のアジトへ避難したらしいっスよ?」
「アジトの転送装置にアクセスすれば、あっという間ですからね!それにアクセスキーの認証は僕ら以外にはできませんし」
彼らの会話から、アサシンギルドのアジトは幾つか存在するようだった。それも、移動手段に転移装置なるものがあるようなので、逃げるには事欠かないだろう。
セキュリティーも万全なようで、その装置にアクセスするには、彼らしか知り得ないコードが必要となる。故に、部外者に装置を使われたとしても彼らがどこへ転移していったのかを追うことは出来ない。
「襲撃されてんのに、よくそんな判断ができたもんだな。白獅の指示か?」
「ですね、サスキさんもそのように言ってましたから」
「んで、避難してる間みんなでアイツを相手にしてたらしいんスけど、倒すには至らず・・・」
「あぁ・・・。あの野郎、だいぶイカれてやがったからな」
「あっ、それとサスキさんが妙なことを言ってました」
「ん?」
口調の穏やかな少年が、ベルシャーに気になることを言う。それはベルシャー自身も密かに感じていたことであり、何故アジトの場所がバレ、不意を打たれたのかに繋がることでもあった。
「襲撃を仕掛けて来たあの人物なんですが・・・。存在が不確かだとか・・・」
「不確か?なんだそりゃぁ・・・?」
「分かりません・・・。ただ、複数人で迎え撃つ中、その者は確実に当たるであろう攻撃が当たらなかったそうなんです。その時身体がノイズ走っていたんだとか・・・」
「ノイズ・・・」
ベルシャーとの戦いでは見せることはなかったが、アジトへ襲撃を仕掛けた男は、アサシンギルドのメンバー達との混戦の中で、細かなブロックノイズが走っていたのだという。
「それで、仮にではありますがその襲撃者のことを“ノイズ“と呼ぶことにしたそうです」
その者の特徴から、白獅が“ノイズ“と命名し、今後の動向を追うということになった。
今回は単独であったようだが、必ずしも一人だとは限らない。何処かの組織に属し、アサシンギルドのことを探っていたとも考えられる。ただ、彼らを襲おうとしている者の存在と、その外見を知ることができたのは、大きな収穫と言えるだろう。
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