暗闇に駆ける雷光
火を宿した矢が一斉に放たれる。まるで戦艦から撃ち放たれる砲撃のように光で暗闇を照らしながら、リヴァイアサンに向かって一羽二羽と、次々に飛んでいく。
リヴァイアサンも、まるで城壁を崩す大砲のように突っ込んで来る炎の鳥。それは決して無視できるものではなかった。丁度、シャーロットの抜けた穴を埋めるように活躍するチン・シー軍。
おかげで、リヴァイアサンを守るように海面から伸びる水の触手はエイヴリー海賊団の動きは邪魔されずに済んでいる。それでも小型のモンスターや、リヴァイアサン本体の魔法や、その巨体で起こる大波で前線は手一杯だった。
そんな中、危機に陥っていたマクシムはロイクのドラゴンを失い、リヴァイアサンに突き刺した鋼糸に掴まり、必死に振り落とされないようにしがみ付き、何を企んでいるのか頭部の方を目指し、登っていた。
リヴァイアサンが魔法やブレスを構える度に、まるで電磁波に当てられたかのように全身が痺れる。魔力に当てられ、正気を失いそうになるマクシム。
「くッ・・・!全く・・・どんだけ桁違いの魔力をしてやがるッ!何もしてねぇってのに、意識が持っていかれそうになる・・・」
加えて、どこに命中するか分からない、チン・シー軍による援護射撃でリヴァイアサンの体表が燃え上がる。
「隊長ッ!マクシムさんの行方が分からなくなりました!」
「なッ・・・!?どうしたというのだ、マクシムッ・・・!こんな状態じゃぁ探せないぞ」
マクシムの姿が消えたことが、ロイクの耳に伝わる。前線へ帰還したマクシムらは、二手に分かれてそれぞれの役割を果たしていた。
ロイクは竜騎士隊を引き連れ、戦場に蔓延る羽虫のように飛び交う小型モンスターの排除を担当していた。ドラゴンの機動力を持ってすれば、海面から飛び上がるモンスターの距離を把握し、仕留めることが可能だった。
だが、数の上では圧倒的に不利な状況であることには違いない。数体の群れに集中していると、予期せぬ方向からの奇襲に遭ってしまう。レールガンを積んだエイヴリーの船を重点的に守るも、それも時間の問題だった。
するとそこへ、エイヴリー本人から号令が海域に響き渡る。各船のマストに取り付けられた拡声器からエイヴリーの声で、形勢逆転の一手を決行する合図が言い渡される。
多くの者が命懸けで守り続けた最高火力であるレールガンに光が集まり、分厚く暗い雲に覆われた海域に、紫電が駆け巡る。轟音を響かせながら、レールガンの砲身の向きを変えるエイヴリー海賊団。
しかし、その先にはリヴァイアサンはいない。正確には、リヴァイアサンが海面から姿を現している丁度付け根付近を狙っているようだ。貴重なレールガンの一撃を、あんなところに撃ってしまえば、これまで時間を稼いでくれた者達の命が無駄になってしまう。
更にそこには、自軍の船も数隻滞在し、未だに小型のモンスターと戦っているのだ。一体何を考えて射線を変更したのか。計画の詳細を説明されていない船員達は、その動きに動揺し大きく士気を下げてしまっていた。
「なッ・・・何故こちらに砲身を・・・。我々ごと引きとばすつもりなのか!?」
「馬鹿な!?船長に限ってそんなこと、ありはしない!」
「分からんぞ・・・。あの船にはアルマン殿も乗船されておられるのだ。少数の犠牲で勝利を掴めるのなら、そんな策を船長に提案しかねない・・・」
海域に光が灯される反面、エイヴリー海賊団の一部の者達の表情には暗い影がかかる。
今にもアルマンの提案した策が実行されようかというところで、一隻の船が滑り込むように戦場へ現れる。
「おいおい!何だあの光はッ!?」
「そんな・・・。あれはレールガンだ・・・」
「レールガン?なんでそんな近代兵器がこの世界に・・・。そもそもあの船は何だ?まるで戦艦じゃないか・・・」
小型船の利点を活かした小回りで、リヴァイアサンの周りに生えるようにして伸びる水の触手を躱し、落ちないようにモンスターを退けるのは、シン達の船だった。
彼らが到着した頃、丁度リヴァイアサンが次のブレスを溜め始める為、大きくその口を開いた。ここぞとばかりに、エイヴリーの放ての号令でレールガンが発射される。
激しい稲光と共に放たれた雷は、その砲身の射線上すぐのところで待機していたリーズの眷属達の群れの隣を通り過ぎる。その瞬間、レールガンから放たれた雷は、発射までに蓄えていたエネルギーがまるで嘘のように小さくなってしまった。
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