第10話 幕間
埋没する意識の中、また力で負けたと泣きそうになった。
明日香さんはとても強い、けれど負ける気がしなかったのならそれはきっと、私の怠慢であるでしょう。
まだどこか出せる力があったのかもしれない、こうやって四度目の敗北の味を私は舐めてしまう。
強い、本当にあの人は強い。正々堂々と卑怯に生きているなんて本当に図々しい強さだ。
写島は宗家のつまはじき者達が作った家である。宗家に生まれならが無能の烙印を押されたものや、素行の悪さゆえに宗家と認められなかったもの。そういった存在の負の情念だ。
だがその負の感情は、時代を経て一つの弱者の極みに立っている。
勝つ為にどんな手段も使う。そして何より、どんな能力者でも自分たちは一撃で殺される事を確信しているからこそどれも同じ存在だと認識している。
私であっても結局のところそれは変わらない、どうせ同じ能力者ならどうにかして勝てると彼らは本気で思っている。
永久のCランクとはよく言ったものである。
A級のCランクとでも呼んでやろうと思ったことが何度あるか。
ある意味それは酷い認識だ、彼らは自分たちで自分たちを括っているとさえ思える。弱いからこそ弱いなりに弱くあろうと、弱いからこそ自分たちは誰にも負けないでいられると。
ある意味それは慢心と言う感情を配するための背水の陣なのかもしれない。
だが勝てる、私は無理だったけれど確実にただの写島には勝てるのだ。
弱者の血統の中でも、あの祖母と孫は違うのだ。言霊使い、本来能力に左右されない系統に属し、自分の言葉に嘘偽り無いと言う確信が出来た言葉を世界に具現化させる能力。
写島とこの能力は火にガソリンだ、意志力だけなら私より上はいくらでもいる。
その完成品があの二人だ。凶暴な感情を内に秘めた明日香さん、あの人は元々が豪快だから気にならないけれど、あの孫は少し毛色が違う。
あの戦いを見ても何の感慨抱かない、冗談じゃない。あれは別だ、戦いと言うものに興味がない、何一つ感情がない。
明日香さんとは違って恐ろしく戦いづらい、あれが本当に勝ちのためなら手段を選ばない類の人間だ。
だが種は仕込んでおいたよ、どうせまだ明日香さんとは続きがあるんだ。
後継者同士の戦いはさっさと勝たしてもらおうと思っているんだ。次は殺し合いで決着をつけないとお互い納得いかないんでねぇ。
落ちる意識全てを使って殺意を放つ、その感情を受けても、商社であるあの人は悠然と笑う。
「そうかやってみな、次はそっちの命はないよ」
上等ですよ、負けやしませんよ次は、どうあっても負けるつもりで戦う事なんてありませんしね。
だからこの敗北は次の炎の為に残しておきましょう。
最後の戦いは私が勝ったとき、それ以外の結末を認めるつもりは私はないんですよ。
「そりゃこっちもだよ」
結局私達は同類で負けるという言葉が嫌いな我侭な子供と言うことですか、全く後継者の方は不甲斐ない戦い方をしないでもらえるんでしょうね。
させるつもりもありませんけど。
おや勘のいい子だ、顔を真っ青に染めて、覚悟が出来てるようで全く十全ですよ。
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