第7話 幕間
さてこの気絶した子があの子か。
明日香さんとは似ても似つかない子であります。堂々と目の前で人質をとる行為のあと、社会的殺人が思いつく辺りあの女の素質がありかもしれませんがね。
しかし不意を疲れたとは言えあれほど簡単にアサヒさんをしとめる手管は凄いのですが、それ以上に驚いたのは私の炎を直感的に回避したことでしょうか。
本当に驚きました、殺す気ではなっていたのですが、どうにもこうにもさすがと言うしかありゃしませんね。
「写島の後継と言われるだけの事はあると申しましょうか」
ならより一層、私の孫は分が悪い。どうにも私以外の人間が全て弱いと勘違いしているようですし、困った孫です。明王以外にも世界には恐れる敵は何人でもいらっしゃると言うのに。
一度根こそぎプライドを叩き折って貰わなければならないでしょう。それこそ太平洋戦争後の私のように。
あの敗北は私にとっては鮮烈でした。何しろあの人は、私に攻撃させる隙すらなく地面に叩きつけてくれたのですから。
素晴らしいですよ。
「あの、不動明王様。支配者の名を与えてもらっております、鷺宮明です。今回はいきなりの写島の方のぶしつけな行動お許しください」
「気にしなくてよろしいです。写島はこんな人しかいやしませんからね」
普通私を見たらこういう態度を示すのが普通なんでしょう。ですが、私の事をどうとも思っていない辺りはさすが写島といったところでしょう。
本来であれば焼き尽くしてやりたいのですが、明日香さんとの再戦はまだしない方がよろしいでしょうし。何よりあの人は、ここで孫を殺せば間違い無く関連した人間全てを皆殺しにする為にいらっしゃいますから。
まだその時ではないでしょう。
「ところで写島の子とはどのような関係ですか」
「それはえーと、初恋の相手と申しますか。そんな感じです」
「そうなんですか、とてつもなく男の趣味が悪いですから去勢した方がよろしいですよ」
本当にまったく。これほど悪趣味な方がいるとは、長く人生生きてきましたがありえません。
「もう、この人意外が私の夫になる可能性が無いだけなんですよ」
「鷺宮の子がなんでそんな遠い目するんでしょうかね」
「あの一族に負けた人間の末路なんてこんなものです。魔術師にあって以来私の人生は、あの人を中心に回らざる終えないんです」
一体この子に何をしたんでしょう。この世界唯一のインチキ存在は、と言っても私が考えるのはこの後の再戦の事や、孫との戦いぐらいですので、道でもよろしい事ですが。
ただこの一族に負ければ否が応でもこの血脈に囚われてしまうのは仕方のないことなのでしょう。
それは私も同じ、あの日ただ他の能力者を甘く見ていた代償もあった。ただそれを覆す圧倒的な暴力の前に私は屈服していた。
時として理不尽な暴力は芸術になるのです。私はその暴力を見てしまった。
この子もまたあの悪魔のような暴力を見てしまったのか、それなら生涯を通じてあの暴力に見せられる以外の道はなくなってしまいますから。
なら同じ被害者同士少しは話も合うかもしれませんね。
***
だがしかし、彼の戦闘法がかなりうら若き乙女にするには非人道的すぎる行為ばかりで。
肥溜めに犬神家、他には路上の王様など、バリエーションに飛んでいてなおかつ女性にやるには酷すぎる代物ばかりだったため。
その報復として意地でも嫁にもらってやろうと言う考えなだけだったりする。
追加するなら、一応自分を負かした始めての人間だからと言うのも付け加えられるだろう。彼女の男の評価基準は顔でも血でもなく、純粋に自分より強いか弱いかだけしかない。ただの戦闘狂なのだから。
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