第二章 最初の恋愛イベント①
『大変だわ! あの人、正気を失っている!』
いきなり講堂で暴れだした生徒を見ながら、リーンは顔を青白くさせた。
そんな彼女を支えるように、学院の保健医であるモードレッドが
『あれは「
さらにもう一人、リーンの
彼の手にも同じように宝具が巻き付いていた。
『俺も
『でも、神子候補って
リーンは左右を見回す。先日まで平民だったリーンでも神子のことは聞き
その神子候補が生徒たちの中にいる。しかし、生徒が暴れだしたのは使者が説明している最中だ。まだ誰が神子候補なのか、わかってはいなかった。
『君が神子候補なんだね』
『え?』
明るい声が背後からかかり、いきなり手を取られた。その手には先日から不自然に浮かび上がってきた
彼女の手を取ったのは、先ほどまでリーンの
『ボクはジェイド。どうしてか、君を守る騎士に選ばれたみたいだ』
そう言って
『えっと、ジェイド。どうして私が神子候補だって……』
『え、知らない? 神子候補には選定の儀が行われる前に、こういう花の模様の痣が浮かび上がるんだ。だから、ボクには君を守る義務があるってわけ』
『神子……』
リーンは
先日まで身寄りがなく救済院にいたのに、いきなり
『それならば話は早い。私たちと
『君の力が必要なんだ』
モードレッドもオスカーも強い
彼らの熱い視線を受け、リーンの胸にも使命感が
『私の力でよければ……』
リーンは一歩前に
そうして見事、彼らは最初のお役目を果たしたのだ。
──と、いうのが本来のプロローグの在り方である。
「あああああああー!! 前世の私っ!! なんでプロローグを
その隣にはやはり
時間は昼食時、二人はいつもの温室に昼食であるサンドイッチを持ち込み、作戦会議という名の
「もう起こったことだし、後悔しても仕方ないでしょ。それより、早く食べないと次の授業に
いつも以上に冷静な
「ギルは事の重大さをわかってない!」
「と、いうと?」
「選定の儀は神子候補同士の票取り合戦って言ったでしょ。私にギルの一票が渡ったということは、私がリーンよりも一歩先んじてしまったということなのよ! このままリーンが誰ともくっつかなかったら、私が神子に選ばれちゃうの!!」
その場合、セシリアは教会に洗礼を受けに行く道中、
思いがけない結末を聞き、さすがのギルも頰を引きつらせる。
「姉さんが死んで、国が滅ぶとか……」
「なに、その反応」
「
セシリアは今まで、ギルバートに自分の未来を『お先真っ暗』や『
逆に、どうして具体的なことを
「それなら、宝具渡さない方がよかった?」
「そんなことない! あの
あの場でギルバートから宝具を受け取らなかったら、周りからは『障り』を祓える謎の人物として
なので、あそこでのギルバートの判断は正しかったし、何度感謝してもしきれない。
今こんな事態に
「ギルこそ、宝具、私に渡してもよかったの? 一世一代のチャンスだったのに……」
セシリアは首をかしげる。
神子直々の
しかし、神子になる意思のないセシリアに宝具を渡したということは、ギルバートはその権利を丸ごと
「別に。そういう権力とかあんまり興味ないし。……それに、元々姉さんにしか
そう言いながらサンドイッチを
(そういえば、ギルは少し人見知りなところがあるのよね。リーンにはまだ出会ったばかりだし、ちょっと近寄りがたいのかも……)
ゲームの中でもそういうシーンはあった。
根暗でひきこもり青年のギルバートは、最初、リーンに全くと言っていいほど心を開かない。授業にもあまりちゃんと出ない彼を世話することになった彼女は、彼の心を解きほぐそうと試行
『きっと、俺は出会った時から君のことが好きだった。
そう愛を告白するシーンは、涙なしでは見られないほどだ。
ちなみに、別の
セシリアはギルバートの
「この学院生活で、ギルも少しは人見知りを直さないとね!」
「人見知り? なんの話?」
「ほら、本当はリーンとも仲良くなりたいんでしょ! 一目惚れだもんね! 好きな人には声をかけられないその気持ち、よくわかるよ!」
「俺は姉さんが何を言ってるのか、ちょっとわからない……」
「
ギルバートは義姉の言葉に何も答えない。ただ半眼になって『こいつもう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます