キスと完治の兆し

彼女のブログが見えなくなってから、数日が経った。


出かけたついでとか、

部屋の窓からなんとなくとか、

たまに見上げた空には星空が広がっていた。


その隙間には、たまに『あ』とか『が』とか断片的な文字が見えたりしたが、内容までわかるようなものではなかった。それも毎日ではなく、見えることの方が稀だ。


一度『キス』という文字が見えたときがあった。

断片にしか過ぎず、その文字にはなんの意味もないことはわかっている。それでもその文字に密かにドキッとしたりした。


明日、定期健診がある。


そこでまもなくの完治するだろうことが告げられ、インプラントデバイスを外すことになるのだろう。そうなれば、手術だ。


手術への恐怖は感じない。ただ大切なモノを失ったような、空虚さだけが胸の中をぐるぐるとしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る