台風一過と習慣の実感
あれから3日程天気が晴れる事はなかった。
最終的には台風が通り過ぎ、温度はぐっと下がり、本格的な秋の訪れを感じさせた。そんな季節の変わり目に町中はどこか落ち着かない。僕もご多分に漏れずどこか落ち着きを欠いていた。ただその理由は世間とは全く違うものだ。
この3日間、あのブログはどうなっている。
そればかりが気がかりで、上の空で今日一日が終わっていった。
前までは、毎日見るような習慣はなかった。特異な現象から眼を背けようとしていたこともあるだろうし、天気的に連日星空が拝めるという機会があまりなかったのが大きかったと思う。
故に習慣にまでは発展しなかった。
ただここ最近の連日の晴れ模様で、窓を開ければ毎日眼に飛び込んでくる状況と
それをなんだかんだで見てしまったことで、あのスイーツブログの半強制的な閲覧が、習慣となってしまったのだ。
習慣というのは恐ろしい。
3日程度途切れただけでこんなにも生活に支障をきたしてしまうものなのか。正直あんな内容のないものにここまでハマってしまっている自分が信じられないとともに、悔しい気持ちはあるものの、この際仕方がない。
それ程に、僕は今あのブログを求めている。
まだ日は落ちていないが、山の上公園で夜になるのを待つべきか。しかしすっかり肌寒くなった今日は、長時間待機するにはやや厳しい。近場の喫茶店で時間を潰そうと決め、下校の準備をする。
「おーい、日直係! こいつを運ぶのを手伝ってくれ!」
今の御時世には不釣り合いな、重厚長大な機械を軽く叩きながら、
担任が教室へ声をかけている。
ご愁傷様だな日直係。
おれじゃん。
この世のものとは思えない重さの機械を運ばされた挙句、倉庫整理まで付き合わされ、汗だくのうちに開放されると、外はすっかり夜の帳が降りていた。
疲れ果て、フラつきながら、校門から夜空を見上げる。
『お久しぶりぃ』
まるで僕に話しかけているような文面に目を疑う。
どういうことなのか、今すぐ全文を確認しなくてはいけない。
習慣化したものが見れないというストレスと、まったく無関係だと思っていたスイーツブログに、自分のと繋がりが見えた高揚感で、もはや冷静な判断はできず、僕は山の上公園へ走りだしていた。
もはや疲れなど感じない。
普段はトボトボとゆっくり登る公園までの坂道も、一気に駆け上がり、達成感も感じぬまま、開けた夜空を一望する。
『お久しぶりぃ ちょっと落ち込んぢゃってたから更新できなかった
カレに逢いたいって言っただけなのに、パパにちょー怒られた
立場のチガイだってゎかるケド、このキモチにはウソつけなぃ』
へたり込むように、その場に座りこむ。高揚した気分は、一気に下がり、冷静さを取り戻していく。
「ははは、まあそうだよな」
たまたまブログが更新されず、不特定多数に向けたブログ再開の挨拶。そんなこと少し考えればわかったはずなのに。ただ、また習慣を果たしたことでの不思議な充足感は確かに感じていた。
「よくわかんないけど、とりあえずパパに同情するよ」
相変わらずの文面に脱力しながら、確かな喜びを感じている僕がいた。
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