狂った街

第41話 学園

 闘技場での戦いから早くも一週間が経った。

 ゼフは現在、集合場所である学園前でレンが来るのを待っていた。

 今日は学園は休みということもあり人通りも少なく驚くほど静かだ。


「後少しで約束の時間だな」


 ゼフはそう言いながら隣にに立っているシルヴィアを見つめる。

 この一週間は情報収集と何故シルヴィアがどうしてこうなったかというのを確定づけるものを探していた。

 しかし、残念な事に未だ完全に理解できていないでいた。

 ゼフはパラサイトに関してはゆっくり調べていけばいいと考える。

 すると、足音が聞こえてきたのでそちらの方を向くと、そこにはレンが手を振りながらこちらに歩いてきていた。


「いやー、早いね」

「少し早く着きすぎただけだ」

「そうなんだ、それじゃあ早速だけど行こうか」


 そう言われるがままにレンに連れられて学園の中に入る。

 学園内にはぽつぽつと人がいるようだが、やはり静かである。


「ところで今日は何をしに行くんだ?」

「そういえば言ってなかったね。 今日はこの学園で一番偉い人に会ってもらうんだ」

「そうか、一つ疑問なんだが何故会う必要があるんだ?」

「僕は連れてくるように言われているだけで分からないけど、多分見定めをするんじゃないかな?」

「見定めだと?」

「そう、力があるのはあの戦いを勝ち抜いたから分かるけど、もしも性格に難があったら困るだろう?」

「確かに困るな…… 例えばだが本当にそんな奴が来た場合はどうするんだ?」

「残念だけどお引き取り願うんじゃないかな。 学園には念のために冒険者には劣るけどそういう人達はあらかじめ用意してるみたいだし」

「もしそうだとして、何故用意してるもの達を使わないんだ?」


 ゼフがそれを言うと同時に校舎の中に足を踏み入れる。


「冒険者は実戦経験が豊富だからね。 そういう者達が教えた方が都合がいいからね」


 ゼフはそのことを予め知っていた。

 冒険者を雇う理由としては冒険者を雇うお金はそれ以外を雇うのよりも安い。

 そして、死んだとしてもこの街は冒険者はそういう者だという認識なので大きな騒ぎになることはない。

 この二つの理由があるからこそ冒険者を雇うらしいのだ。

 さらに付け加えるとするならば、この学園は他種族との戦いを想定する育成方針なので、それを知っている冒険者は何かと使えるという事だ。

 それから校舎に入ってしばらく歩くと、立派な扉が目の前に現れる。


「ここがこの学園で一番偉い学園長の部屋だよ。 準備はいいかい?」

「ああ、大丈夫だ」


 そう言うとレンは二回ノックして扉を開ける。


「学園長、レンです」


 レンがそう言葉を放っている先には白ひげが特徴の強面の男がこちらを睨むように座っていた。


「君がゼフ君だね? ギルドマスターのレンから話は聞いてる」

「そうか、それじゃあ改めて挨拶をさせてもらう。 俺はゼフでこっちがシルヴィアだ」


 シルヴィアはペコッと頭を下げる。

 この程度なら行えることは実証済みである。


「ふむ、言葉遣いはあれだが礼儀は弁えてるみたいだな。 では、そこの椅子に座ってくれ」


 ゼフ達はその言葉通り椅子に座り、学園長と向かい合う。


「さて、今日来てもらったのは君にこの学園でやってもらうことについて話し合うために呼び出した」

「なるほど、それで俺は何をすればいい?」

「簡単な話だ、君には召喚士としての戦い方を生徒達に伝授してもらいたい」

「なるほど、因みにそれはどれくらいまでというのはあるのか?」

「召喚士に関しては特にはない。 できれば私を驚かすぐらい強くしてほしいものだがね」

「それはどういう意味だ?」

「私は召喚士には何も期待していない。 だが、この学園は召喚士を育成しなければならない。 それがこの街のルールだからな」

「なるほど…… 不人気の職である召喚士の人数を増やす為に優秀な冒険者を闘技場で戦わせ召喚士としての魅力宣伝をする。 そして、他の職業のサポートを全て任せ、もし戦えるようならば戦場に投入するということか」

「なんだ、分かってるじゃないか。 君には生徒達に悟られないように他の職業のサポートの仕方を教え込むだけでいい。 因みに座学に関しては我が学園の教師に任せるから安心しろ」

「だが、もしも俺の持つ生徒全員が戦場に投入できるレベルになった場合はどうするんだ?」

「万が一にもありえないが、他の職業の使えない生徒と変えよう」

「大体は分かった…… それでいつから始まるんだ?」

「七日後に戦闘場というところで召喚士は昼から始めるはずだ。 直接で構わないからその時までにそこに待機していれば生徒達が勝手に来る筈だ」

「七日後だな」

「ああ、頼むぞ。 因みに万が一でもここで話したことを外にばらした場合はどうなるか分かってるよな?」

「ああ、大丈夫だ。 それぐらい理解してる」


 ゼフはそう言うと立ち上がりレンと一緒に扉の前に着くと深気づかれないようにため息をつく。


「それじゃあ学園長失礼します」

「もし、分からない事があればレン君に聞くといい」

「分かった」


 そう言うとゼフ達は部屋から出て行く。

 残った部屋で学園長は考える。

 その後ろ姿は毎年来る奴となんら変わらない。

 しかし、先程の脅しとも取れる行動をあっさりと受け入れたのだ。


(まったく…… 弱者ならこのような面倒なことをせずとも良かったんだがな。 かなり場慣れはしているということか)


 学園長はメッセージの魔法を使いあるところに飛ばす。


「引き続き奴の監視を頼む」


 その後、学園長は再び椅子に座り軽く息を吐いた。

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