第42話


今日は話し合いの日だ。

朝早くから湯浴みをして、メイドさんたちにあれもこれもと全身をピカピカに磨いてもらった。

ドレスはあおいさんが用意してくれた青にダイヤが星のように散りばめられたもの。

ネックレスとイヤリングは前回エステルさんがくれた青と銀のものをつけた。

準備は完璧だ。

全部メイドさんのおかげだけど。


王宮に行くからか、前回レストランに行く時に使ったのとは比べものにならないほど豪華な馬車に乗り込む。


「うちは公爵家で王宮には近いからすぐに着く。」


あおいさんが言った通り、10分ほどで王宮に着いた。


「オルヴェーニュ公爵家のセレストだ。

陛下との約束がある。」


「かしこまりました。どうぞお通りください。」


門を抜け、お城の入り口まで馬車で向かう。

公爵家も庭が広いと思ったけどお城はそれ以上だね。


入り口に着いてあおいさんのエスコートで降りると文官のような人に案内される。

非公式の話し合いだからか、着いたのはものすごく豪華な客室だった。


「こちらでお待ちください。」


き、緊張する!!


「落ち着け。お父様は先に城に向かっていると言っていたから、おそらくすぐに陛下と一緒にくるぞ。」


そんなこと言ったって、緊張するものはするんです!

普通に日本に住んでたら王様なんて会う機会ないんだから!


コンコンッ。

「陛下とオルヴェーニュ公爵がいらっしゃいました。」


私とあおいさんとエステルさん、3人とも立ち上がり頭を下げる。


「そういうのはよい、ここは非公式の場だ。」


そう言われて頭を上げるととんでもなく豪華でとんでもないイケオジがいた。


うわぁ、すごい。

アニメの中の王様みたい。

・・・はっ!こういう時っててあんまりジロジロ見ちゃダメだよね。気をつけなきゃ!


王様に許可を得てソファに座るとさっそく話し合いが始まる。


「事前に事件現場から出た証拠の書類はヒンメルを通して受け取って目を通してある。」


あの事件のアジトで見つかった書類はあおいさんからお父さんを通して王様に提出してあったようだ。

王様は事件の一通りの流れを知りたいと言うので、あおいさんが王都でブランと偶然出会った時に隷属魔法の気配を感じ、ブランについて調べたところから説明する。


「・・・それと同時に、ここにいる私の弟子のみどりが行方不明の娘を探している女性と出会い、その娘を捜索しに来た現場がブランの懇意にしている誘拐組織のアジトだったのです。」


助けに行ったのに捕まって絨毯でぐるぐる巻にされてしまった情けないエピソードを上手いこと誤魔化して話してくれてる!

ありがとう、あおいさん!


「そして子供たちをみどりが兵に引き渡している時に私がアジトを操作したところ、隠し金庫に証拠の書類を見つけました。」


「・・・そうか。」


一通り説明し終えると、王様はため息をつきながら頭に手をついて黙り込む。


公爵家の長男と夫人が他国の貴族と組んで犯罪を犯してたなんて、王様にとっても大事件だもん、そうなるよね。


「今回のことは話が大きすぎる。そう簡単には済ませられん。

主犯の長男は我が国の国民を奴隷に落とし隣国に売り払っていたため生涯幽閉。

隣国の貴族と渡をつけた夫人はこの件だけだと罰金白金貨10枚というとこだろう。

後は明日どうなるかだな。」


この件だけだと?

夫人は他に何かあるのだろうか?

気になるけど私が聞ける相手じゃないしな。


王様とあおいさんのお父さんは歳も近そうだし、お屋敷も近くにあるし、昔から仲が良いという。

そんなあおいさんのお父さんの奥さんと息子に罰を与えるわけだから、王様も辛そうだ。


長男のブランが幽閉になるということは、当たり前だが公爵家の後継問題も出てくる。


「公爵家はセレストが継ぐことになるのか?

それともエステルが婿をとるのか?」


「セレストに継がせようと思っております。」


あおいさんが次期公爵ってこと!?

もちろんブランは継げなくなるから2人のどっちかがって話になるとは思っていたけど、あおいさんはお屋敷を出て仕事をしてるし、エステルさんはお屋敷に残ってるからエステルさんが継ぐのかと思った。


「セレストは魔法で貴族になった初代の先祖返りと言われるほど魔法も使えますし、その力を使って正しく領地を治め、陛下のお力になるでしょう。」


そうか。あおいさんは魔法が使えるもんね。

公爵様になって領地を持つなら魔法が使えた方がいいよね。


でも、そうなるとお店とアーシスへの扉の管理はどうなるんだろう。


あおいさんが公爵家に戻れるのは良いことなのに。

わかっているのに、気持ちが沈んでしまった。

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