第40話
「・・・なに?ここ、どこ?」
周りを見回して、さっきまで開けようとしていた鉄格子の中に入れられていることに気がつく。
「えっ、なにこれ。」
手には重い、頑丈な手錠。
とりあえずここを出なくちゃ。
「【ウォーターカッター】。
あれ?【ウォーターカッター】!」
発動しない?
どうして!?
「起きたか。」
・・・ブラン!!
「侵入者を捕まえたというから来てみれば、あの時のあいつの女だとは。運がいいな。
捕まえる手間が省けた!
ふっふっふ。どうして魔法が使えないのかと思っているんだろう。
その手錠は魔封じの手錠。
着けた者の魔力を封じる手錠だ。
多少高い買い物になったが、セレストに断られたあの後に買っておいてよかったな。
まさか自ら飛び込んでくるとは!!」
こいつ!初めから私を狙って手錠を用意してたのね!
「あなた、次期公爵なんでしょう!?
こんなことしていいと思っているの!?
それに、あの子達をどうするのよ!」
「ふんっ。
次期公爵だからなんだ。
あいつらはな、売り捌くんだよ!
貴族は金がかかるんだ!こんなのみんなやっていることだろう!」
この国は奴隷を禁止しているはず。そう思っていると顔に出ていたのだろう。
ブランは得意げに話し始めた。
この国でも闇奴隷を買う人はいるが、主に隣国バスドニアで売り捌くらしい。
母親がバスドニア出身だからツテがあるという。
これは母親も共犯だな。
「あぁ、安心しろ。お前は売らずに私の奴隷にして可愛がってやるからな。
あのセレストの女だと思うと楽しめそうだ。」
このクズ男!
こんなやつ、魔法が使えたら吹き飛ばしてやるのに!
「明日にはここを出る。
精々俺のものになる心構えをしておくんだな!」
明日までに逃げなきゃ。でも魔法が使えないのにどうやって??
「・・・どうしよう。」
どうやって逃げようかいろいろ考えたが結局逃げ出せず朝になってしまった。
地下室の入り口が空き、ブランが入ってくる。
「起きているな。
おい、お前ら!こいつを運び出す。
魔法使いだが魔封じの手錠をしているから心配はいらない。
絨毯で包んで馬車に乗せるんだ!」
絨毯でぐるぐる巻にされて馬車の準備が終わるまで床に転がされていると、なんだか上が騒がしい。
上から誰か降りてきたみたい。
・・・あぁ。とうとうここから連れ出されてブランの奴隷にされるのね。
唯一の救いは両親も亡くなってるし、兄弟はいないし、私がいなくなっても悲しむ人がいないのが救いだわ。
そんなことを考えていると、絨毯の上から突然ガッと捕まれ、グルグルと回り始める。
ドサッ。
「きゃあ!!」
「こんなところにいたのか!
お前は!勝手に行動してこんなに心配をかけて!!」
キラキラの銀髪に美しい青い瞳。
国宝級のイケメンがこちらを覗き込んでいた。
「あ、あおいさん〜!
うわぁあああぁぁぁん!!!
もう、私、ダメかと思いました!
ブランに奴隷にされちゃうかと思った!」
急にあおいさんに抱きしめられる。
「泣くな。助けに来ただろう。」
「ふぁい〜!ありがとう、グスッ、ございます・・・!」
「とりあえず泣き止みなさい。手錠を外しなさい、これが鍵だ。
子供を助けるんだろう。」
「はい!」
手錠を外し涙を袖で拭いて、気合を入れて立ち上がる。
サニーちゃんたちは無事だろうか?
私とあおいさんは子供たちを助けるために他の鉄格子へと向かった。
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