第30話


「あぁもう!ほんと腹立つ!!」


今まで使ってやってたのに最近生意気に仕事を断ると思ったら!

地味女のくせに。

ちょっと痩せてメイクだのおしゃれだのし始めたと思ったら、あのイケメンと旅行ですって?


「調子に乗ってるわね。」


せっかく私の方から聞いてやったって言うのに!

定員がいっぱいで募集してないとか嘘までついて、私がくると取られると思っているのね。


地味女にあのイケメンは不釣り合いなのよ!!


私みたいな目上の女とは立場が違うのをわからせてやる。

あのイケメンだって私と知り合ったらあの地味女と立場が違うってことに気づくでしょ。


「絶対に突き止めてやる。」


仕事を終わらせていつも通りあおいの店に向かうみどりの後ろを花守がついていった。



電車を降りて少し歩くとみどりが建物に入っていくのが見える。


「はぁ?ここで習い事?普通の家じゃない。」


ってことは、男の家に遊びに行くために私の頼みを断ってたってこと??

本当にムカつく。

地味女だからそこまでしないと男が寄ってこないのね。

でもあんなイケメンをコソコソ自分のものにしようだなんて。


イケメンだってあんな女に時間を割いてあげるだなんて。今まで周りにロクな女がいなかったのね。でも大丈夫、すぐに私が目を覚ましてあげるわ!


でもどうしましょう。

習い事だなんて言うからどっかのビルとか教室とかだと思ってたのに。こんな普通の家だと入っていくのもおかしいわよね。


「すみません、ここ通していただけますか?」


「なに!?

今忙しいの、よ・・・。」


なにこのイケメン2人は!

可愛い系イケメンとワイルド系イケメン!!


「あの、ここで友達が習い事の教室をしてるって聞いて来てみたんですけど、普通の家に見えて困っていたんです。場所ってここで合っていますか?」


「習い事??

ここは店だぞ。」


「嶺二さん。習い事って、もしかしてみどりちゃんの友達じゃない?」


「そう!そうです!」


「でも、こっちのやつ連れて入って大丈夫なのか?」


「場所を伝えて習い事してるって教えてるくらい仲良い子ってことでしょ?

ダメな子ならそもそも教えてないんじゃないかなぁ。」


「それもそうだな!じゃ、俺たちは中に入るから、みどりに用があるなら一緒に行くか。」


「ありがとうございますぅ!」




カランカラン。


「おーいみどり、あおい!いるか?

入り口でみどりの友達だってやつに会ったから一緒に連れてきたぞ。」


「え!?

友達って誰のことですか?

私ここのこと誰にも教えてませんよ!

って、・・・は?

なんでいるんですか?花守さん。」


「うふふ、きちゃった♡」


えええ!?

昼に断ったのに!もしかして、後つけられた?

怖い怖い怖い!

しかも嶺二さんも月島くんももしかして俺たちやっちゃった?って顔してるけど、もう手遅れだよ!


「誰だお前は。

みどり、知り合いか?」


「同じ職場の人です。

ここのことは何もおしえてないんですけどね。」


ほら前に言ってた人ですよ。

仕事押し付けてくる、私が遅くなる原因の人です。ってコソッと伝えたら、あおいさんも覚えていたみたいで眉間に皺がよった。


「なんでここに居るんだ。」


「みどりちゃんが最近習い事始めたって言ってたから、私も一緒に習いたいなと思って♡」


「受け付けてない。帰ってくれ。」


「でも、ここはお店なんでしょう?

私がいてもいいじゃない。」


「ここは決められた人しか入れない。」


「会員制なんですか?

じゃあ私も仲間に入れてくださいよぅ。」


「帰れ。」


なんなの?この人。

せっかく私がきてあげたのに帰れだなんて。

どうして文月はよくてこの私がダメなのよ!


「どうしてそんな酷いこと言うんですか?

せっかく知り合いになれたのに。仲良くしてください。」


「ここは私の店だ。私が帰れと言っているんだ。」


やばい!

あおいさんが怒り始めてる。

これ以上怒らせたらやばいよ花守さん!

ほんと、大人しく帰って!!!


「え〜?」


「おいおいその辺にしておけよ、ここは会員制なんだわ。

勘違いして連れてきた俺がわるいけど、誘われて来たんじゃないならもう帰ってくれないか。」


「っ、でも!」


「あのさ、ちょっと勘違いしてない?

どう見たってみどりちゃんの方がかわいいじゃん。

おねぇさんは色々顔に塗りたくって誤魔化してるだけでしょ。

それに誘われてもないのに勝手に来て逆ギレっておかしくない?

自分がおかしいってわからないの?それとも頭もおかしいの?」


「なんでその地味女が良くて私はダメなのよ!!

あんたたち目ん玉腐ってんじゃないの!

趣味の悪い男なんて、こっちから願い下げよ!もう二度と来ないわよ、こんなとこ!ふんっ!!」


バタン!


「・・・はぁ。

3人とも、ご迷惑かけてすみません。」


「いや、俺がみどりの友達だと勘違いして連れてきたのが悪かったわ。」


嶺二さんにきいたら、月島くんとお店に来たら入り口から中を覗き込んでいて邪魔で入れなかったって。それで声をかけたら私の知り合いだと言うから連れてきたらしい。

場所も教えてないのに、まさかつけられてたってこと?


「あれだけ言ったからもう来ないとは思うけど、でもみどりちゃんは気をつけた方がいいよ。

同じ職場なんでしょ?」


「そうですね、これからはもっと気をつけます。」


事務職で普段は個人個人でパソコンに向かって仕事してるから仕事で関わることはほとんどないけど、もっと気をつけなきゃ。

あおいさんだけじゃなくて嶺二さんも月島くんもかっこいいもんね。

はぁ。3人とも見られちゃったし、明日からはもっと大変になりそうだな。

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