美しい空の下で紡がれる物語

上田怜

屋上で出会ったのは天真爛漫な女の子でした。

昔から空を眺めるのが好きだった。僕の唯一の楽しみは放課後、屋上に行くこと。そこで、ぼーっと空を眺める。空はいつも見せる表情がころころ変わる。そんな空が好きだった。

その日も、授業が終わると屋上に向かった。

普段は僕一人しかいないのだが、その日は先客がいた。

その子はフェンスにもたれかかってぼーっと空を見上げていた。

150センチくらいだろうか、とても小柄だった。肩口で切りそろえられた黒髪は手入れが行きとどいていて、わずかにつやがあった。

人の気配に気づいたのか、その子はフェンスから体を離してこちらを向いた。少したれ目で笑った顔はひまわりのようだった。

「あれれ…?ここ、穴場だと思ったんだけど知ってる人いたんだ…」鈴のような声で言葉を紡ぐその姿はとても可愛らしく見えた。

「私は空を眺めに来たんだけど、君は?」

無邪気な笑顔でそう尋ねてきた。

「僕もかな、なんか落ち着くんだ。」

「君も?ふふ、私たち一緒だね。

「う、うん。」あんな笑顔を向けられてはそう答えるのが精一杯だ。

「あ、そうだ自己紹介がまだだったね。私は美羽空。美しい羽に大空の空で美羽空。君は?」

「僕は大和大地。大きいに和むで大地は地面の大地。」

「へー‼大地か…いい名前だね。」

名前を褒めてもらったのは初めてかもしれない。

「美羽さんはいつ頃から屋上にいるの?」

あまり見かけないこともあって、そう聞いてみた。

「3ヶ月くらい前からかな。」せいぜい3日前くらいからだと思っていたから結構驚いた。

「私ね、鳥に憧れているんだ。」美羽さんは唐突にそう言った。

「え?と、鳥?」突然すぎて思わず聞き返してしまった。

「そう、鳥。なんか「自由」ってイメージあるよね。鳥って。」

「鳥か…僕も鳥みたいに空を飛んでみたいとかよく思った。」

そう言うと美羽さんは驚いたようにこっちを向いた。

「大和君も?本当に似てるね、私たち。」

その声は弾んでいてどこか楽しそうだった。

「よろしく、大和君。私のことは「空」って呼んでね。」と握手を求めてくる。

「よろしく、みは…空。よかったら「大地」って呼んでください。」

照れくさかったし、緊張のせいもあってか変な敬語になってしまった。

「よろしく、大地‼」あのひまわりのような笑顔で僕の手を握ってきた。

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