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カラスが1羽、曇天に消えた。


今日もまたくだらない人の諍いを見た。


その理由も実にくだらないもので、何でも喧嘩を売った男が丁度酒を飲んでいる所に、売られた側の男がぶつかってきたせいで、服に握りこぶし程度のシミが出来たからだという。


私が仲裁に入らなければ2人のうちどちらかは、数ヶ月モノの怪我をしているところだったろう。

まあ止めた時にはもうお互いに多少の流血があったのだが。

いや、それでも間に割って入った事を後悔してはいない。


唐突だが、私は自分が嫌いだ。

いきなり何を言い出すんだと言われればその通りだが、先の仲裁にしろ、まったくの不本意という訳でもないが、あんなことは普通通りがかりの一般人が危険を被ってまでする事ではない。

それでも、自分が他の誰かを助けられるなら、出来る範囲で助力したいと思っている。そう思いたくない。

私は、人を愚かと切り捨てられないこの私の中途半端な優しさが嫌いだ。

私の優しさは所詮偽善でしかない。

世のため人のためと言いながら、己が身から切り捨てるのはたった薄皮1枚。

自分に都合のいい範囲で、私はまさに善と言いはばかり、その虚栄心に拍車をかける。


道端に転がるネズミの死体を俯瞰しながら、乾いた笑いを浮かべる。

あぁ、やはり、これは見栄だ。

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