第53話 鍛冶師と学者
首を傾げるキルロにアッシモはニヤリと笑う。
「いやー、オレも分かんねえだけどさ」
「分かんねえのかよ!」
アッシモに突っ込む、知った風な聞き方をして、全くもって紛らわしい。
眉間に皺を寄せ、答えの出ない問い掛けに悶々とした。
その様子をニヤニヤと笑いながらアッシモは続ける。
「わりいわりぃ、じゃあかわりに、どうして
「言われてみれば、確かにそうだな。元はただの石だもんな。劣化するから? いや、石って劣化するか?」
「半分当たりだ、何で石が劣化すると思う?」
アッシモがキルロを試すように矢継ぎ早に質問した。
深く考えたことない事ばかり聞かれ、脳がぐるぐるする。
キルロは頭を横に振ると少し首を傾げ、アッシモはキルロを愉快気に見つめた。
「
「吸い寄せて周りの
「そういう事だ。オレらはなんで吸い付けるのかとか、そもそも
「なるほどね」
なんとなく払い退けるものだと思っていた。
そんな事を考えていると、吹き溜まりでの採取を思い出す。
「
「お!
「なるほど」
岩らしくないのも、軽かったのも合点がいく。
「
「え? どういうこと? 育つってこと??」
「
「え? どうやって?」
アッシモは楽しくなってきたのかやけに饒舌だ。
研究の話にノリノリなのは、学者肌ってやつなのか。アッシモは目を輝かせながら質問を続ける。
「交換後の
「うーん、【吹き溜まり】か? な?」
「しか今はないよな。元は
「へえ。
「そう! 結局、
「なるほどね。って、先からこればっかり言ってんな。そういやここまで道中、エンカウントが、ほとんどなかったんだが、なんか知っているか?」
「精浄したばかりだからだろ、しばらくこの周辺は落ち着いているはずだ」
「そっか」
学者が【吹き溜まり】に興味を持つ理由は、なんとなく理解出来た。
聞いてみるか?
いや、いいか。
アッシモに笑顔を向けながら、そんな事をぼんやりと考えていた。
「よ! 挨拶遅れた【アウルカウケウス(金の靴)】の副団長のケルト・スタッツだ。宜しく」
大柄な
学者というには随分とゴツイ、アッシモもゴツイと思ったがそれ以上だ。
とはいえ、知的な雰囲気も持ち合わせており不思議な感じのする男。
腰に鞭を携えているという事は
ケルトは人懐っこい笑顔を携え歩み寄ってくる、団長、副団長が現場に揃い踏みとは、大きなソシエタスとしては珍しい。
キルロ達も挨拶するとキルロの肩に手を回してきた。
「団長に捕まって大変だったな。興が乗るとあの人話長いんだ」
ケルトは肩をすくめて首を左右に振り、キルロに同情の言葉を掛ける。
「まあ、面白い話聞けて良かったよ。知らない事ばかりだったし」
「お詫びじゃないが、オレのパーティーが先行して次の目的地のレグレクィエス(王の休養)まで精浄しておくから、道中はそこまでキツくならないと思うぞ」
「そうなのか?! それは助かる」
「そっちは荷物が多くて、どうしても動きづらいから役割分担しないと。荷物が届かなかったら北のヤツらが泣くしな」
「荷運びも責任重大だな」
「そういう事だ。そういや、アンタの所サーベルタイガーいるのな。すげーな。テイムしているヤツを初めて見たよ」
「ウチのメンバーは優秀なのが揃っているんだ」
キルロはそう言ってケルトに笑みを送った。
「明日は一日休養だ、【アウルカウケウス】のパーティーが先行して精浄しといてくれるって」
キルロは皆を集めて今後の展開や、アッシモから聞いた、
マッシュとハルヲは興味深そうに聞いていたが、フェインは途中で何かを見失ったらしくキノと遊び出し、ネインは黙ってひたすら耳を傾けていた。
「キシャは誰の直属になるんだ?」
「アイツの所は次男のアステルスだな。【アウルカウケウス(金の靴)】、レグの所の【ブルンタウロス(鉛の雄牛)】、それと兄貴の所の【ブラウブラッタ(青い蛾)】全部アステルスの直属だ」
キルロの問い掛けにマッシュが答えてくれた。
アステルスの管轄地域だからアステルスの直属が多いのは必然といえるのか。
「【ブラウブラッタレギオ】ってどんな感じ?」
「曲者!」
「え? それだけ」
「そうだな、後はソシエタスとして
「疑っていたの?」
「曲者ばかりなんて怪しいだろう」
ハルヲはマッシュの答えに驚いた表情を見せた。
シルも自分のソシエタスも疑ってかかるって言っていたけど、身内だろうと関係なしか。
急にシビアな現実を突きつけられた気がした。
「しっかり休養取って、明日からもう一踏ん張りしよう」
キルロの言葉に皆で頷きあった。
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