第45話 “裸の総理”を指摘した官僚の妻

 「この2人は調査をされる側であり、再調査しないと発言する立場にないと思います」

 私の渋川ゼミでは2年前から言い続けてきましたから、ごもっともです。言葉の主は、森友疑惑の渦中で自殺した近畿財務局の職員・赤木氏の夫人。「(財務省の)公文書改ざんの再調査はしない」と参院の集中審議で答弁し、自殺した職員の自筆の手記が公表されても、これまで同様に真相の解明をしようとしない安倍総理や麻生財務大臣に正面切って“ナイフ”を突きつけました。7年の長期政権で閣僚ポストを餌に与党自民党議員を“飼い慣らしてきた”総理にとっては相当の衝撃だったに違いありません。私のゼミでは安倍総理を何回となく“”に喩えてきましたが、赤木夫人は『王様は裸だ!』と叫んだ少年の姿と重なりました。2年前、全く同じ指摘をしていた私のゼミ員たちは追及が甘い野党やマスコミに隔靴掻痒かっかそうよう状態でしたから、快哉かいさいの声を上げていました。もしかしたら、2020年3月23日は安倍政権のターニングポイントになるかも、です。

 

 かつて、田中角栄総理が逮捕されたロッキード事件の際、総理の筆頭秘書官の妻だった榎本三恵子さんが「夫が5億円の賄賂を受け取っていた事実」を法廷で証言した自らを“”と例えた話を思い出しました。1976年のことです。

 “”とは「自分の命をかけて相手に致命傷となる一撃を与えること」という意味です。ミツバチが相手を刺す時、針に釣り針の“”のような逆向きのとげがあるために針が抜けず、刺した蜂自身の腹部が千切れる危険があることから、命懸けの喩えに使われることがあります。


 よほど総理と財務大臣の態度に腹を据えかねたのでしょうね。麻生財務大臣には『墓参に来てほしい』とメッセージを送ったものの『墓参りは遺族に断られた』と真逆のウソの発言されたことが気に障ったこともつまびらかになりました。


 総理は再調査しない理由について『検察の捜査が終わっている』とも。政府と検察をめぐっては、最近になって法務省を巻き込んで従来の解釈を強引に変更してまで東京高検の検事長の定年延長の人事が強行されていて、今回の総理の答弁にも妙に合点がいきます。『捜査に手心を加えるように』と。昇進や定年延長の甘い“餌”をちらつかせて検事に起訴させない懐柔かいじゅうの手口なら、という意味です。総理は福島瑞穂議員の批判にそうしたように、『妄想だ』と一蹴するのでしょうが…。

 森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんに関わり処分を受けた財務官僚の幹部がいずれも昇進していることも不可思議も、一貫して組織ぐるみで総理を守った“論功行賞ろんこうこうしょう”なら話は分かりやすいですね。世論調査で「総理を評価しない」一番の理由「総理の人間性」という回答もストンと腑に落ちます。

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