第17話 平成、令和はキャリー・ケース優先社会?
「石を投げれば〇〇に当たる」。人や物事の多さを表した慣用句です。
平成の終わりから令和のニッポンは「石を投げればスーツ・ケースに当たる」ー。
最近、街を歩いていて3人に1人か、4人に1人は頑丈そうなトランク型のキャリー・ケースを引いているような気がします。旅行者が増えたのか、仕事を抱えたビジネスマンが増えたのかー。空港の手荷物検査よろしく、中身を空けて調べてみたい衝動にかられます。
私は二十数年前、2週間程度海外に行く機会があってスーツ・ケースを買い求めました。中身は正にスーツが2着。古めの下着やソックスは帰国の際にはたくさんの土産に変わっていましたが、今では「箪笥の肥やし」です。実際には箪笥には入らず(大き過ぎて)、“クローゼットの肥やし”です。レンタルにしておけば良かったと後悔しきりで、「スーツ・ケース圧縮袋」の登場を期待したい今日この頃です。
さて、誰が何を持って街中を闊歩していても、小島よしおよろしく「そんなの関係ねぇ」私ですが、どうにも怒りを抑えきれない光景が毎日のように繰り返されています。舞台は駅や商業施設のエレベーター。デパートやショッピング・モールのエレベーターは別にして、駅のそれはバリア・フリー対策です。ユニバーサル・デザインのピクトグラムで表示もありますので、意味が分からない方はいませんよね。足の不自由な方や脚力の弱いご年配や車椅子の方、妊婦さん、乳幼児をベビー・カーに乗せて移動する家族など、「優先座席」の対象者となる方々がストレス・フリーかつ安全に利用できるよう一定規模以上の駅舎には「後付け」も含め設置されています。乗るドアと降りるドアが別な独特な構造も、そうした方々が狭いエレベーターの中で身体の向きを変えずに乗り降りできるよう工夫された設計です。
しかし、です。現実社会はそんなに優しくありません。
実際、目撃してしまいました。とあるJRの駅のホーム脇に設置されたエレベーター前。キャリー・ケースを引く観光客やスーツ姿の男女が並んでいました。その列にはベビー・カーを押した女性が二組。扉が開くと、スーツ・ケース組は順番通りにエレベーターに乗り込み、ベビー・カーの女性たちに
気持ちは分からないでもありませんが、エレベーターの台数やスペースにも限りがあります。「後付け」が多いためか、ひとつのホームに一基だけの場合が圧倒的に多く、商業施設のそれに比べたらスペースも四分の一か、それ以下。ひと家族で2個、3個のケースを抱えていたらそれだけで満員状態です。本来優先されるべき方々がただでさえ狭いエレベーターに乗ることが出来ずに次を待つ姿を何度となく見てきました。来年のオリ・パラに向け、「トランク」を引いたインバウンドの増加は容易に想像できます。こうした動きが駅や商業施設で一層増えることも想像に難くありません。
高速道路の料金値上げや一般道の交通規制もいいでしょう。暑さ対策も必要です。しかし、公共交通機関の利用のあり方は「人に優しい社会」の実現のためにも、少し考え方を変えるだけですぐに対応できる「お・も・て・な・し」です。
そんな優しさの欠片もない人のキャリー・ケースは踏んだって蹴飛ばしたって構わない、という条例でも作ってくれませんかねぇ、小池さん。大丈夫、少し蹴飛ばしたくらいではビクともしないくらいに頑丈そうですから…。
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