第36話 母ちゃん達からの試験2だぜ!

 やってまいりました、試験当日。今日、俺とジンクの2人は1泊2日の試練のたびに出る。あれから必要なものはちゃんと買い足して、まさに準備満タンだ。そして、西門へとやってきた。


 西門にはいつかの門番であるグラファイトのおっちゃんがいた。最初に出会ったのは北門だったんだが、どうやら、門番というのは定期的に持ち場が変わるようで、週によって門番する門が変わってたり、街中を警備したりしているようだ。


「おや、ラピさんに、エメラさん達ではないですか。今日はご家族で狩りですか?」

「ああ、そんなもんだね」

「なるほど、この装備だと、モンスターを狩ってそのままバーベキューというところですね?」

「流石だぜグラファイトのおっちゃん、今日はバーベキューの予定だ!」

「ははは、羨ましい限りですな。では、チェックも終わりましたので、気をつけて行ってきて下さい」

「おう! サンキューだぜ!」


 門の外へ出るにはとあるルールがあって、俺とジンクだけでは外に出られないので、父ちゃんに母ちゃん、ガリウムのおっちゃんにラピおばちゃんが今は一緒にいる。確かにこのメンバーで鉄板とかを持ち歩いてたら、外でバーベキューと思われても仕方ないな。


 ちなみに門の外へ出るルールっていうのは簡単だ。子供の場合は、大人同伴ってことだな。子供だけで遊びにでかけていいほど、この世界の街の外は安全じゃないからな。でも、なにごとにも例外はあって、ギルドへの登録証があるれば、子供でも単独で外に出かけられるんだ。ま、最低限の生き残る知恵、無いし武力があるっていう証明がないと、子供は外に出ちゃだめですよってわけだな。


 もちろん俺とジンクはそんなもの持って無いから、今はまだ親同伴だ。でも、この試験に合格すれば、母ちゃん達からハンターギルドの登録をしていいっていう許可が出るんだぜ! もっとも、ハンターギルドの登録にも試験があるようなんだけどな。


 そんなわけで、門をでてしばらくは大人達と一緒なんだけど、このあと西の草原にたどり着いたら、大人達と分かれて試験開始になるってわけだ。父ちゃん母ちゃんはその辺で俺達もキャンプするとかいってたが、これはあれだ。絶対に後をこっそりつけてくるパターンだな。そして、俺達は西門を出て西の街道を進み、牛モンスターなどのいる西の草原に到着した。


「それじゃあ、アイアンちゃん、私達はこの辺りでぶらぶらしてるからね。もし寂しくなったら、いつでも戻ってきていいからね」

「アイアン、ジンク君、2号君と武装ゴーレムのメンテは万全だが、もしも異常があったらすぐに戻れよ。あきらめることも勇気だからな」

「ジンク、アイアン君があほしないようにちゃんと見張るんだよ」

「ジンク、アイアン君、2人で仲良くやるんだぞ」


 まてまてまてまて、ラピおばちゃんの応援だけおかしいだろ。なんで俺が変なことやるの前提なんだよ。


「ああ、わかったぜ母さん」


 ジンクもそこに反応するんじゃねえよ!


「心配無用だぜ! ジンクもいるしな!」


 だが、俺も心は大人だ。ここはスルーしてやることにしよう。


「じゃあ、アイアン、行くか」

「おう!」


 こうして俺達は、始めての2人での狩りに出発した。俺とジンクは両親との別れに涙する、ことはなかった。どっちかというとうきうきとわくわくでいっぱいだったからな。


「くう~、もうすでにテンション上がってきたぜ」

「ははは、あんまり浮かれるなよ、アイアン」

「わかってるぜ! そだ、ジンク、母ちゃん達のことなんだけどさ、本当にあそこで大人しくしてると思う?」

「い~や、思わない。母さんとエメラおばさんの性格を考えたら、絶対こっそり付いてきてるな」

「だよな~、かといってこっちのパッシブレーダーに引っかかるようなまねはしないだろうし、アクティブレーダーで探しちゃう?」

「ん~、ちょっと探してみたい気もするが、アクティブレーダーはダメだな。何も無いところでむやみやたらに使うと、それはそれで減点されそうだし」

「はあ、その可能性もあるか、ちっ、あきらめるかな」

「まあ、そのうちぼろを出すだろ。母さんもエメラおばさんも、隠れてこそこそなんて、短時間ならスキル的には出来ても、長時間は性格的に無理だろ」

「それもそうだな。んじゃ、俺らは予定通りランク4に出会うまで、どんどん奥まで進んでいくか」

「ああ」


 この西の草原は結構広いんだけど、俺達がこの1年ちょっとの間出入りしていた場所は、結構浅いところだったんだよな。まあ、俺達の狩りの時間である朝飯~昼飯の間、あるいは昼飯~夕飯の間だと、奥まで行くには時間が足りなかったからなんだけどな。え? 弁当持って行けばいいんじゃないかって? 俺とジンクだけならそれでもいいんだけどさ、母ちゃんかラピおばちゃんも一緒じゃないとダメだったからな。1日俺達に付き合うってなると、母ちゃん達の仕事に支障が出ちゃうんだよな。というわけで、普段はあんまり奥に行けてなかったんだよな。でも、今日はそういう遠慮をしなくていいからな、半日くらいかけて草原の奥まで行く予定だ。


 え? 無謀じゃないかって? 大丈夫、問題ない。なぜならこの俺達の行動は母ちゃん達も知ってるし、ある種想定内の行動だったからだ。そもそもラピおばちゃんの提示した条件のひとつである、ランク4以上のモンスターを狩るっていう条件が、普段の行動範囲だとけっこう厳しいんだよな。


 この世界、モンスターは言ってみれば自然の一部だ。だから、自然魔力が強い場所ほど、強いモンスターが生まれ、育ちやすいってわけなんだ。でも、俺達の普段の行動半径の中だと、ランク4が確実に生まれるほどの、強力な自然魔力の場所が無いんだよな。もちろんたまに出くわすことは会ったぜ、他で生まれたのがやってきたのか、自然魔力の揺らぎの関係でたまたま生まれたのかはわかんないけどさ。ただ、初めて戦った牛モンスターもそうなんだけど、ランク4としては小ぶりな連中ばかりだったんだよな。でも、もっと奥までいけば、西の草原にはそういう自然魔力の強いホットスポットがいくつか存在するって話しだから、今回はそこまで行って、ランク4を確実に狩ろうってわけだ。


 そうそう、まだみんなに紹介していなかった仲間がいたな。そいつを紹介するぜ! その名も、1号君改だぜ! この1号君改は、1号君を運搬用車両に改造したものなんだぜ。狩をするうえでなにが大変って、狩ったモンスターの運搬なんだよな。最初は2号君やジンクの武装ゴーレムで、巨大なリアカーを引っ張ってたんだけど、2号君も武装ゴーレムもそれように出来て無いせいでなかなか速度も出ないし、大変だったんだよ。そこで、1号君が手持ち無沙汰だったから、じゃあ1号君をそれように改造して、1号君にリアカーを引っ張ってもらおうってなったってわけだ。運転に関しては、俺がドライバーゴーレムを遠隔で動かしてもよかったんだけど、ジンクのやつが、武装ゴーレムだと移動時も中で歩かなきゃいけないのが大変とかいうから、1号君をジンクの武装ゴーレムが乗って運転するタイプの、運搬用車両に改造したんだ。


 そのため、1号君はだいぶ変わっちまった。全長は5000mmくらいに、全幅は2500mmくらいに大幅に拡大したし、クローラーやエンジン、魔力タンクなんかは全部、牛モンスターの運搬にも耐えられるようにより大型なものに変更した。とはいえ、ジンクの武装ゴーレムはデカイから、中に入るのは断念した。そのため、エンジンルームの上にジンクの武装ゴーレムが座って乗ることになったんだぜ。操縦は、砲塔背面ハッチから出ているバイクのハンドルと、足元のペダルで動かす仕組みだ。車とか戦車というよりも、バイクベースの1人乗りのATVみたいな仕上がりだな。


 性能に関して言えば、最高速度は、荷物を載せていない時で時速70キロ、リアカーに牛モンスターを載せると時速50キロってところだな。ジンクの武装ゴーレムが走る速さが、MAXで時速40キロくらいだから、結構速いだろ? 装甲に関しても全身30mmと、ジンクの武装ゴーレムにあわせて調整してある。ジンクのやつ、この1号君改に乗ったまま戦う練習なんてのもしてたから、さながら騎馬兵みたいな感じにもなってるんだぜ。


 ま、そんなわけで、俺達は1号君改のおかげで、荷物を気にせず狩りが出来ているってわけだ。


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