勇者


おれは勇者だ

旅を続けていた

ダンボールで出来た鎧や兜がおれを守ってくれていた

守ってくれていればいいなと期待を寄せていた

実際にはどうだかわからない

すごくセロテープが使われていて衝撃を受けると同時にばらばらに砕け散った

おれは勇者だ

酒でも飲まなければやってられるか

新しい街に到着すると同時に酒場へとなだれ込んだ

そう言えばあの踊り子は今頃どうしているだろう?

名前は確か………バーバラだった筈だ

それは一夜限りの恋だった

懐かしいな

手元のジャックダニエルを転がしながらおれは回想を始めた

「バーバラ、はあはあっ」

おれのグラスの中に涙が自然と零れ落ちた

バーバラはもういない

それなのにバーバラの女体が今すぐに欲しかった

バーバラはロバ

おれがすっかり動物プレイにはまっていた三年前の夏の物語だ

「どうかしていたよな、動物に自らの性器を挿入するだなんて」

だがあの頃のおれに怖いものなんて微塵も無かった

「バーバラ、こっち来いよっ」

バーバラの手綱を引いて酒場の二階へと駆け上がった

蹄の木材を突く音が狭い階段内で反響した

部屋の扉を閉めると同時におれはバーバラに襲い掛かった

「やめてえーっ」

バーバラが叫んだ

おれは驚き周囲を見回すと仕掛けはすぐに理解することが出来た

天井に設置されていたスピーカーから女の声が聞こえて来たのだ

(吹き替えだ)

おれはこの店の行き届いたサービスに心底、関心した

嫌がるロバを無理やり犯す

勇者として生まれて来たからには一度は挑戦してみたい事柄の一つだ


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