真実について


殺伐とした世の中で

冷蔵庫を開けるということ

冷蔵庫を開けるという行為をすること

それは

何か特別な意味があると気付いただろうか?

異常に膨張したが

目には見えない闇の質量に

わたしたちは哀願するべきなのさ

お願いだから殺さないでと

もちろん神様に酷似したそいつが

生まれて初めてこちらの要求を飲む筈もなく

非情な返答がただ待ち構えているだけ

夜明け前には全てが露呈されるだろう

隠しておきたかった真実

真実には友達がいてそいつによく似たやつしか今まで見たことがなかったという事実

灰色の雪がわたしやきみの肩に降り積もり

ゆるやかに絶望へと移行するだろう

崩れる時はあっという間だった

あんなに積み重ねるのは大変だったのに

崩れる時はあっという間だった

記述は簡潔に記された

きみが放課後の音楽室で物言わず佇んでいたとき

それは既に始まっていたのさ

誰もそれに気付けなかった

気付こうとはしなかった

気付かない方がより良い人生を歩めそうな気がしていた

わたしたちが生きている間だけの期間限定の真実でしかなかった

何もかも錯覚だった

時は流れ

わたしたちが誰もいなくなったあとの午後に

椅子は再び喋り出すだろう


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