ちくわがあった


ちくわがあった

天ぷらに加工されたちくわだ

そういったものには正式名称が用意されていた

ちくわの天ぷら

なるほどな

「知恵がつくなあ〜」

おれは売店で声を出して感想を述べた

ちくわの天ぷら

それを眺めた

おれの名前は田中

つまり田中がちくわの天ぷらを眺めているということになる

それが真実だ

「田中が、またちくわを眺めていやがる………」

まるで自分は田中ではないよう客観的にそう呟いてみた

なかなか良かった

「天ぷらかあ〜」

それ以外の感想は無かった

ある方がどうかしている

心の容器の中には何も入ってはいなかった

時計の針は回る無意味に

気付けばおれはおじいちゃんになっていたのだ

孫が足に絡み付いた



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