第6話 自作パロ「満足なエルフィン」の場合

ひょんな事から「セックスをしないと出られない部屋」の管理人になった俺。

それから数年、実に多種多様な言い訳をして様々なセックスの解釈を見せつけられてきたわけだが…今回はどうやら毛色が違うようだ。

どういうわけか異世界の住人を招き入れてしまった某部屋の様子をモニター越しに見て俺は頭を抱えた。

男の方は中世風の没落貴族と言ったところか。

女の方は…エルフだった。耳が尖っていて褐色肌の少女。いわゆるダークエルフというやつか?しかし全裸なのが気になる。やる気満々か?


さて、どんなセックスを見せてくれるのか楽しみじゃないか。

俺はモニターを覗き込んだ。


/**********/


「お父様…」

「しないぞ、私は」


食肉用エルフ、通称「エルフィン」の少女ユノーがひと言発しただけで、畜農貴族ガンスティールは腕を組んだままボソリと応えた。


「お前は王に捧げるために育てているんだ。それを私が傷物にしてどうする?」

「ですがお父様、伝説の料理『満足なエルフィン』は食肉となるエルフィンが生前に幸福感を得ることで脳内に快楽物質が分泌され美味になると言われています。性器を食するわけではないので本来の目的に適っていると考えられます」

「しかしだな…表向きは私はお前を娘として育てている身だ。娘に手を出す父親など」

「います。悲しいですが児童虐待の一種として性的暴行があるとされています。また、幼少期の暴行被害の加害者としての割合は…」

「もういいもういい、たいしたものだよ。屋敷から出ることもなくそれだけの知識をよく得た物だ。感心するが、それなら尚わざわざ養父と性交などよくも提案できた物だ」


ガンスティールはうつむいてユノーの視線を躱す。


「…他の食用肉には子ども産ませるくせに」


ボソリとユノーが吐き捨てる。


「………は」


ギョクリと目を見開き狼狽えるガンスティール。


「…い、いま何と?」

「……? いえ、何も?」

「………そ、そうか。とにかく何か別の方法で脱出方法を探さなければ品評会に間に合わなくなるな」

「…………インポ野郎」

「……………!?」

「…どうしましたか、お父様?」


じっとり。湿度の高い視線が、鋭く据わったユノーの紅い瞳からガンスティールに突き刺さっている。

それを直視することも出来ずにガンスティールは扉に掲げられた看板を忌々しそうに睨み付けていた。



「それで、お父様。別の方法にお心当たりはございますか?」

「う、ウム……考えている所だ」

「左様ですか。でしたらひとつ提案があります」


ユノーはガンスティールに手が届く所まで近付き、その細い腕を前に差し出した。


「私を食べてください」

「なに…」


「セックスとは相手の肉体の一部を自分の体内に受け入れること、そして混じり合うことと解釈できます。人間の一般的な男女の睦言でも、性交渉を求める際に『eat me』と比喩する事があります。であれば比喩ではなく実際に食べていただければ、本来の性交渉よりも更に濃密な交わり…セックスになるのではないでしょうか?」


ユノーは小指がない手のひらをガンスティールの口元に導く。


「つまみ食いなら、1本も2本も大差ありません。さあ、お父様。私を食べて」


紅く潤んだ瞳に捕らわれたガンスティールは、まるで飢えた獣の本能に抗うかのような素振りを見せながらも、唾液が溢れそうな口を開いていった。


そして


/**********/

俺はモニターから目を背けた。

イヤーッ!

何何何何何何何何何何何何何何何何何!

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

やめてやめてやめてやめて痛い痛い痛い痛い!

セックスはしないのに食べるのはオッケーってどういう倫理観してるのお父様!?


ダァァァァン!


俺は叩きつけるように解錠ボタンを押した。

血みどろスプラッタは片付けるのも大変だし心がね、心が痛いから!

早く出て行ってよォ……!


モニターをチラ見するが2人はカギが開いたことに気付いていないようだった。


な、何でだよォ! いいから、ハイ、終了!蛍のひかり流して!音響さん早く!!


/**********/


カチリと小さな音を立てた扉を横目で一瞥してからユノーは微笑んだ。


「あら、素敵な音楽ですねお父様」


どこからともなく流れる異国の旋律にユノーは頬を赤らめた。


「小指はもう無いから、今回は薬指で。

 フフッ、まるで祝福されているみたいで素敵ですね?


 アッ……」


そして。



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