第2話 魔法を使ってみた
「なんじゃそりゃーーーーーー。こんなのムリゲーじゃねーかよー。責任者でてこいやーーー!!!」
喚き散らしているオレの方をコタロウが心配そうに首をかしげて見ている。かわいいヤツだ。
「ふう。まあ、しょうがない。今回はコタロウに免じて許してやるかー」とどうでもいいことを言ってみる。喚いたらちょっとは気が晴れてきた。
それに、オレは少しワクワクしている。そう、ファンタジー世界と言えば魔法。
初級とは言えソレが使えるんだからな。
「よーし。ちょっと試してみるか」
まずは火魔法だ。通常、魔法を使用する場合には次の2つのパターンがあるハズ。
一つ目は技名を言って魔法を発現させるパターン。例えば「ファイアーボール!!」とか言うと火の玉が飛ばせるヤツだ。
2つ目は魔法のイメージを具現化させる方法だ。火魔法の場合、火が燃えているところをイメージさせるって事だな。
オレはもちろん2つ目の方法を試すことにする。
そもそも技名を知らないし、もし「ファイアーボール!!」って元気よく言って何も出なかったら痛すぎるからだ。周りには誰もいないんだが、コタロウには見られるだろう。飼い主のそんな恥ずかしい姿を見られるわけにはいかないのだ。
「よーし。」まずはイメージだ。オレの手のひらから火炎放射器のように勢いよく火が放出される画を想像する。「集中だ。集中して」そして自分の中の魔力を一気に凝縮し爆発させるんだ。
「ゼエゼエ・・・」
オレは頑張った。息をするのも忘れるくらいに集中した。集中しすぎてこめかみの血管切れるかと思ったくらいだ。
ところが、全く火が出ない。それどころか煙さえ出ないのである。
「ふう。最初っからムリがあるのかも知れない。もっと小さい火を出してみるか」
と今度は手のひらに炎を出現させるイメージを思い描いてみる。自分なりに手のひらに魔力を集めて火に変換するイメージだ。
「集中集中。」とまた血管切れるくらい集中する。
すると手のひらに「ぽわ…」とろうそくくらいの炎が出現した。
たったそれだけの事にオレはすっかり有頂天になってしまい
「やったぜー。やってやったぜ。オレは魔法が使えるんだぜ。見たか?コタロウ??」
とドヤ顔でコタロウの方をみやると、コタロウは興味なさげに大きく伸びをしてあくびをしていた。まあ、ネコだからこんなものである。
コタロウの素気ない反応に冷静になったオレは「あんだけ頑張って、ちっさい炎チョロっと出すだけとかショボっ」と思ってしまう。
「うーーーん…」
気は進まないが、もう一つの策を検討してみるか。
「ファ、ファミ、じゃなくてファイアーボール」
と小さな声で唱えてみる。
するとオレの手のひらからピンポン玉くらいの火の玉が発生し、10メートルほど飛んでいったあとスっと消えた。
「まじか…大して魔力も込めなかったしあんな小さな声でしかもセリフすこし噛んだのに。」
そっか。イメージでも技名でもどっちでも出していくスタイルか
オレは妙に納得した。
それならば、と前方の杉の木もとい杉ちゃんに向かって「ファイアーヴォオオオオオオル」
と叫んでみた。
するとまたオレの手のひらから今度は拳大くらいの火の玉がすっ飛んでいき杉ちゃんに着弾した。そのまま、杉ちゃんは炎に包まれていく。
「ヨッシャアアアアア。どうだ、見たか杉ちゃんめー。コレがオレのファイアーボールだぜえええええ」とすっかりテンションアゲアゲだったのであるが、すぐに「やべ、コレ山火事になるだろ。あれ?森だから森火事だっけ?」
よしこの勢いで水魔法だ。「ヲーターボオオオオオル!!!」
「・・・・・しーん」
「あれ?何も出ない?なんで?ウォーターボール!!あれ?こうなりゃ風魔法か?ウィンドカッター!あれ?」
なぜか水魔法も風魔法も発動しない。
オレがオタオタしている間にも炎は勢いを増していく。オレは消火活動に役立ちそうなものがないかそのあたりをキョロキョロ見回した。
ところが、水どころか火を消せそうなものは何一つない。
「ヤバいよヤバいよ。ヤバイヨヤバイヨ。もうヤバイヨ」
オレはテンパり過ぎてヤバいよを連発するのみである。
その時、炎がスっと消えた。
見るとオレが狙った杉ちゃんだけが燃え尽きてて他には全く飛び火していない。
「・・・なるほど。対象物が燃え尽きたら炎も消えるシステムなんだな」
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