第14話 ジョナサンの覚醒~砂漠の攻防⑤

 何時間ふたりでそうして抱き合ったまま、横になっていただろう。

 プリンス・チャーミングは王子ムハンマドの恐ろしさを知っていたから、砂漠に築かれたこの人工都市に来てから、ずっと気を張り詰めていたのだが、結局は自身も鳥かごに入れられてしまった。眠れない夜が続いていたせいもあり、疲れていた彼は、考えるのが嫌になった。イマージュは限りなく儚げで、あまりに無防備な姿をしていた。こんな感情は初めてだったが、彼を守れるのは自分しかいないのだから、彼を守らなければ…と、思った。

 やがて薬が効いてきたのか、イマージュは少し元気を取りもどした。

 秘密組織の捜査官として過ごした日々は、イマージュに一流のスパイとしての技能をいつの間にか身につけさせていた。

「この部屋の監視カメラは、あそこと、あそこと、あそこ、それからあそこにもあります」とイマージュはプリンス・チャーミングに教えた。

「今の時間帯は、ムハンマドは来ません。一応、彼にも仕事があるから。だから今は、大丈夫」

「ダメです、そんな甘い考えでは…」

とプリンス・チャーミングはイマージュに言った。

「僕は彼とは、君よりずっと付き合いが長いんだ。油断したら、突然とんでもない反撃をくらいますよ。今回の君のようにね」

と言った。


 その頃、宮殿の一室ではジュンスとチャールズが怒り狂っていた。

「プリンス・チャーミングを今すぐ、救出に行くべきだ!」

 大手ITセキュリティー会社の御曹司でもあるジョナサンは、宮殿の監視カメラの映像を入手してチェックしていたのだが、イマージュが監禁されている部屋の映像もその中に含まれていたのだ。

「まだ準備が完全に整っていないのに、それは困る!」

二人を必死で止めるしかなかった。







 

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