異世界もののヒロインと言えば
なにやら、
<異世界もののヒロインと言えば奴隷>
という風潮があるらしいな。なので
『奴隷を買う』
行為そのものには。
『いったい、どんな気分がするもんなんだろう……?』
とな。で、のこのこと男の後について行ってしまい、路地を進んだ先にあった怪しげな小屋に入ってしまった。
「うお……っ?」
瞬間、
「今はメスしかいないんでもしお客さんがオスをご所望だったら申し訳ないですが、今いるのも決してハズレじゃありませんよ。躾は済んでますしね」
呆気にとられて少女達を見詰める<客>に、男は揉み手をせんばかりに媚びた話し方をしつつ勧めた。
「……」
男の言葉も右から左で、
アニメなどで見る<奴隷美少女>達の、本当ならば悲惨な境遇の筈にも拘らずどこか後ろ暗さを感じさせない明るい様子と違って、今目の前にいる少女達は、明らかに媚びる為の笑顔を浮かべながらもそれはあまりに空虚でまるで人形のように嘘くさかった。
向こうの地球にいた時の
ネットなどで晒しあげられる<悲惨な人間>を嘲笑いながらも、どこかで、
『俺も大して違わないじゃん……』
と虚しさも感じていた。
だが、今、こいつの目の前にいるのは、
<不幸そうな人>
ではなく、
<本物の不幸>
そのものだった。
まだ母親に甘えていたいであろう年頃の少女が物扱いされ、首輪とベルトで繋がれ、見ず知らずの男に空虚な媚びた作り笑いを向けるのだ。ここに来るまでの間にもどれほどのことがあり、何をされて、そして買われた先でどのような扱いを受けるのだろうか……
それを想像した
「お客さん……?」
自分をここまで連れてきた男が訝しげに見るのを、
『構うな』
という意味で片方の手で制した。
と同時に、その少女達の中では最も背の高い、年齢が一番上そうな栗色の髪の少女を目で示して、
「こいつはいくらだ……?」
絞り出すように言ったのだった。
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