第12話(口ぽか~ん)

オウノ王子は次に、シナウスの元へ案内される。城内の自動車開発室だ。コトオーは工場の外で待つ。


シナウスは、70歳くらいの老人と立ち話をしていた。自動車の開発者、サルモンキー博士だ。


「サルモンキー博士、やっぱりピストンもハイパーディトゥで造るべきだ」

「軽量化には良いが、口径を変えないとフリクションロスが出る。ダメだ。燃費が悪くなるし、オイルも食うぞ。それに、自動車開発に充てられている予算は当初の10分の1だ。確実に売れる車を造らないといけない」

「分かってるけどさ、分かってるけどさ」


オウノ王子は2人の真剣なやり取りに気圧されている。すると、シナウスがオウノ王子に気付く。


「やあ、オウノ殿」

「あ、どうも」

「さっき父から、ヨコヅーナ国王が亡くなったと聞いたが、本当か?」

「ええ、まあ」

「帰らないの?」

「このオウノ、政略結婚のお相手を見定めるのが先決と考えてます」

「アサノ王女は紹介してくれるの?」

「アサノにはこれから伝えます。それより姉のミタのお相手を探さないと」

「カドバーン王国の公爵を紹介しようか? デブ専ブス専が居たはずだ」

「酷い言い様ですね」

「それはこっちのセリフだよ。あんな、ひでえデブスと政略結婚をさせられそうになったんだからな」


オウノ王子は、グッと堪える。姉を侮辱された。しかし、デブスなのは真実。痩せる気もない。


「さて。デブ専の公爵の家に案内してやる。サルモンキー博士、自動車開発は一時休憩な」

「あいよ」


シナウスとオウノ王子は開発室から出ると、コトオーが待っていた。


「シナウス様、ドスコイ」

「コトオーか。ドスコイ。久しぶりだな」

「オウノ様、次はどちらへ向かいますか?」

「シナウス殿に案内してもらう。もういいよ」

「そうは行きません。外国の要人を守るのも私の役目ですから。ホテルに戻られたり、勝手な行動は慎んでいただきたい」

「堅苦しいな~。どうします、シナウス殿」

「バルトロマイで行くか」

「バルトロマイ?」

「車名だ。4シーターだから、3人で行けるだろう」


3人は城内のガレージに行く。シナウスはシャッターを開けると、数十台の自動車やオートバイが半円形状に格納されていた。シナウスは1台の車のドアを開け、エンジンをかける。


「俺が運転する、乗りな」

「これが、バルトロマイ…………」


バルトロマイという車はセダンタイプで、フロントに自然吸気の大排気量エンジンを搭載されている。様々な電子デバイスが組み合わされた高級車だ。


オウノ王子とコトオーは後部座席に乗り込む。


「オウノ様、シートベルトをお願いします」


オウノ王子はシートベルトを知らなかった。コトオーは、ポカンとしてるオウノ王子のシートベルトを締めてやった。


「それじゃ出すよ」

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