第5話 戦いの後
西条先輩が去ってからというものかなり大変であった。
まず他の教師たちや生徒に兜を脱がされそうになったり、能力の解除をしようとしても後ろからひたすら追っかけてくるので、負けるまでずっと追いかけっこをしていた。
そしてなによりもももっとも大変だったのは、大輝への説明だ。
途中から抜け出してきてしまったため大輝は俺のことをかなり心配していたらしく申し訳ないことをしてしまった。
しかし、いくら大輝でもこの能力をばらすわけにはいかないので自然かつもっともらしい理由を考えなければならなかった。
「で?『最後のジェマ』はどうだったんだ?」
「いやぁ、それがさぁ一瞬でドラゴンをたたき切るからめちゃくちゃ凄かったぞ。俺もいつかあんなかっこいい英雄がついてくれないかなぁ……なんて。」
自分で言っててものすごく恥ずかしい。
どうして自分のことをほめたたえるナルシストにならなければならないのだろうか。
「へぇ~。じゃあさ、新聞部に説明してあげれば?」
「へ?」
「いや、新聞部が『最後のジェマの正体見たり!』って内容で特集を組んでるからさ情報提供でもしてやればいいんじゃないかな?ってさ。」
「い、いやでもいくらなんでも個人情報をさらすのはな……。もともとバレたくないから今までひた隠しにしてたっぽいしな……。」
「大丈夫だって!顔までは見てないんだろ?戦いの様子とかを教えてあげるだけでもいいからさ!」
「う~ん……。はぁ……わかったよ……。」
「サンキュー!」
俺はそのまま授業を終えると大輝に連れられるまま新聞部のほうへと向かった。
新聞部の部室の前に行くと中からドアを思いきりあけながらよそ見をしてる眼鏡をかけた女の子が飛び出してきた。
「はい!では体育館のほうへ行って参rわっ!」
目の前にいた俺の胸へ思い切りぶつかると、その女子生徒は慌てふためき、おでこのあたりを
「す、すみません!よそ見をしてしまっていて……お怪我はありませんか!?」
「あ、あぁ。俺のほうは大丈夫だけど君のほうこそ大丈夫か?」
「あ、はい!こう見えても私は頑丈ですので!」
女子生徒はない力こぶしを作りながら胸を張って自慢げに答えて見せた。
その後何かに気づいたのかのように俺たちのほうへと質問をしてきた。
「ん?でもどうして扉の前に……。もしかして入部希望者の方ですか!?」
「あぁそういうわけではないんだよ。こいつがドラゴンのとき『最後のジェマ』の様子を見てたから情報提供にでもってさ。だよな?」
大輝が会話に割り込みながら俺に確認を取った。
「まぁそんなところだな。」
「うわぁ!わざわざこちらまでありがとうございます!ちょっと待っててください!今お茶の準備をしますから……。きゃっ!」
棚を開けると上からコップが彼女の頭めがけて落ちてきた。
棚にしまうときに扉で強引に抑えたのだろうか、他の食器の類もどんどん落ちてきていた。
「っと……大丈夫か?」
「あ……ありがとうございます。」
「よっ!さすが我らの王子様!」
茶化すときだけは俺を持ち上げる大輝、こいつ一度シメとくか……。
眼鏡女子はお茶を注ぐと俺たちの前に運んできて着席をした。
「どうぞ。で、いきなりなのですがどのようなことがあったか教えてもらえませんか?」
俺はあの時の戦闘の様子を一語一句嘘をつかずにしっかりと伝えた。
当然俺は一般人目線なので真っ二つにした瞬間は見えなかったというていで話を進めた。
「ありがとうございました!ここまでは私が体験した話と完璧に一致しています!ですが彼の剣や甲冑の特徴まではわかりませんでしたか……。」
彼女の言っている言葉に一つの違和感を覚えたが俺はその時は何も気づかず話を進めてしまっていた。
しかし、この後に起こる問題が、彼女を巻き込んだものになるとはこの時の俺は考えてもいなかった。
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