1-9
「「「にゃ〜ん」」」
公園の静かな空気に猫の声が消えていく。
ふと我に返ったスズがタカシの胸元から顔を上げる。
「ばか! 明日になっても目が腫れてたらお兄ちゃんのせいだからね!」
「あはは、それもそうだな。」
「……てよね」
スズは恥ずかしいのか顔を真っ赤にしてそっぽを向きながら何か言っている。
あまりに小さい声のためよく聞こえない。
「なんだって?」
「お兄ちゃん、責任とってよね!」
「ぶっ!!!」
いったい、自分が何を言っているのか理解しているのだろうか。
この雰囲気でその言葉を発していい相手は恋人であるべきだ。
「おい……自分が何言ってるかわかってるのか?」
「///! ばか! 違う!」
スズは自分の言葉の意味が誤ってタカシに伝わったことに、さらに耳まで真っ赤にし、目の焦点が合わないほどに焦ってすぐさま認識を改める。
「そうじゃなくて! 立派なお兄ちゃんは両親を亡くしたたったひとりの可愛い妹を立派にする責任を取るの!!」
「ああ、そういうことか」
責任を取ってと言われて、明後日の方に勘違いしてしまったようだ。
責任を取るというか、責任を持つの間違いだとは思うが荒立てないように黙っておこう。
「それで! 責任取るんなら1つも4つも変わらないから、この子猫たちの責任もとるの! わかった!?」
「いや、それは変わると……」
「わかった!!??」
「はい!」
「それじゃ連れて帰るわよ!」
「はい!」
スズは半ば強引にタカシを説得させると、子猫を優しくカゴに入れると、家に向かって自転車を漕ぎ出した。
「やれやれ」
それを見てタカシも家に向かおうとするが。
「あ、お兄ちゃん! ふもとのスーパーで子猫用のフード買ってきてね〜」
スズはニヤリとタカシに振り返り、そんな事を伝えるとそそくさと行ってしまった。
「まじかよ……」
そして、タカシは本日3度目のヒルクライムに挑むこととなり、翌日筋肉痛に襲われるのであった。
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