第28話 プール① 青春は素肌を晒して
「
「電車を乗り継いで約一時間掛かったけど来て良かったな。プールも広いし飲食店やお土産コーナーもあるし………あ、浮輪とかビーチボールも売ってる!」
「あははー、それにしても人が多いねぇ。迷子にならないように気を付けないと。ナイトプールイベントでは打ち上げ花火もあるみたいだから楽しみだよっ」
「………あつい、はやくプール入りたい」
暮人と聖梨華、美雪、小梅はテレビでも紹介されていた有名テーマパーク『かすがウォーターランド』に来ていた。夏の間だけに期間限定で開園しているプール専門のテーマパークだが、その分様々な人が楽しめるようなアトラクションが設営されている。
聖梨華や美雪が元気良く声を上げるが、小梅は何かをじっと見つめながら俺の後ろに身を隠すようにしていた。その視線を辿ると聖梨華の方へと向いている。
このような小梅の様子は、今日元気に家にきた聖梨華に会ってからずっと続いている。違和感を感じたのはこの前『具現化ジャンケン』のゲームをして聖梨華が帰った後。『疲れたので帰りますね!』と若干ぎくしゃくしながら急いで帰ったことを不思議に思い美雪と顔を見合わせるが、間もなく小梅が下に降りて来た。沈んだ表情をしていたので心配して声を掛けたが『これは私の問題だから』という言葉だけで他には何も語らなかった。
反抗期かなと美雪に訊ねるが即座に『違うと思う』との返事があった。その後美雪が小梅を連れて部屋に行ったことから何かしらフォローしてくれたのだろうと思う。
まぁあれから普通に会話出来ている事や積極的に家事を手伝うようになったことを考えると悪い事では無い。
うん、いつにも増して天使との時間が増えてすっごいハッピー。でも一つ難点があるとすれば小梅があまりベタベタしてこなくなったことだろうか。人肌が好きな俺としてはなんだか悲しい。
しかしこれまでの妹の様子を思い出して微笑んでいると聖梨華から声を掛けられる。
「暮人さんっ、なにデレデレとした気色悪い笑みを浮かべてるんですか。そ・れ・よ・り・も、こーんな可愛い子たちを侍らせてるんですから、何か言うことがあるんじゃないですかぁ?」
「言葉を選ぼうね!?」
「事実ですから!」
自分の尊厳を賭けてそんなことはないと否定したいが、第三者から見てそうもいかないだろうなというのが辛いところ。
聖梨華は『ほらほらどうですか~?』とまるで見せびらかすかのように豊満な胸の谷間を強調するかのようなポージングをとっている。それに並んで美雪と小梅もどこか期待をしながらこちらを見ていた。
三人はただでさえ綺麗と可愛いを兼ね備えている美少女なので何とも返答に困る質問なのだが、顔が赤くなるのを自覚しながらなんとか答える。
「いや、その………すっごい、似合ってると思う」
「え~、それだけですかぁ? 女の子が異性に質問してるんですからもっと言ってくれても良くないですか? ねぇ美雪ちゃん、小梅ちゃんっ!」
「………そっ、そうだねー。折角この日の為に三人で買ってきたんだし、もう少ししっかり見て欲しい、かな?」
「にいに、もっと真面目に言って欲しい」
聖梨華の言葉に同調する二人。もじもじと恥ずかしそうに身をよじるが暮人を見る視線は真剣そのもの。これに応えなければ男が廃るというものだろうと考えた。
改めて三人がこの日のために頑張って選んだであろう水着姿を見る。
「まず聖梨華さん、その黒いフリルの水着はとても似合っていて綺麗だ。スタイル抜群のプロモーションと相まって艶やかな水色の髪が映える。胸元の中心にあるフリルの紐が蝶結びになっているのも聖梨華さんの魅力を引き出す最大限のポイントだと思う」
「ふぇ………?」
「美雪、美雪は引き締まったスレンダーな体形に淡いピンク色のパレオがマッチしててすごく良い。髪を纏める為にポニーテールにしてて動く度に揺れるのがなんともいえない魅力と綺麗さを発揮してる。可愛さもあるけど全面的に大人っぽさを前に出してるから普段とは違ったギャップがあるね」
「うぅ、やっぱ恥ずかしいけど嬉しいなぁ………」
「小梅、そのセパレート水着っていうのかな? 水色の模様が散りばめられているのがすごく可愛いし、何よりその
「………!(ふんす)」
水着姿の三人をじっと見つめながらそう評価する暮人。美雪と小梅は恥ずかしながらも納得したような表情なのだが、ここで困惑するようにあたふたする人物がいた。聖梨華である。
美雪と小梅の二人を集めると
「え、ち、ちょっと待って下さい!? 如月さんってこんな凛々しい感じで人を褒めるタイプの人間でしたっけ? 私の印象では再度『べ、別にいいだろ………みんな可愛いよ//』って赤く顔を背けながら頬をぽりぽりする感じだったんですけど」
「暮人は昔からいざっていうときには恥ずかしげも無く意見を言う性格なんだ。人を褒める場合には特にね。私も久々に聞いたけどこれはアリ寄りのアリ。あうぅ、にやけるのが止まらない………!」
「食べちゃいたいくらいって言ってた。これはもう既成事実を作るしかない」
「「それはダメ!」」
こそこそと話しているのが気になったのだろう、暮人が「どうした?」と声を掛けてきた瞬間取り繕うように慌てて笑みを浮かべた。
「? それじゃあ行こっか」
「「「賛成っ!!」」」
照り付ける太陽のせいで暑かったせいもあり、プールに向かう足は早足気味だった。
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