第7章
雨で病気になった時の記憶は曖昧なことが多くてひどい時は誰に何を言ったのかも覚えていない。体と心は表裏一体だと聞いたことはあったけど自分が体験するまではそう思わなかった。実際、病気が悪化すると精神的にもやられて何に対しても嫌気しかささなくなって何も信じてられなくなる。それは大好きな
「なぁ、
と聞いてくるのである。さらに怖いのはこの言葉を言う時は普段と同じ声色だということだ。それに対して私はもちろん優兄だと答える。そうすると目に光が入り、いつもの優兄に戻る。特に最近は聞かれる回数が多くなった。反抗期だった時は江川の方が好きだったのだが、あの冷たい目で見つめられると実の兄なのにひどく恐怖を感じて結局は優兄と答えるしかなかった。他の人の名前を言ってしまったら、いつもの優兄が帰ってこなくなってしまうような気がした。でも、本当は優兄よりも好きな人がいる。昔助けてくれたお兄さんだ。そう、昔[#「昔」に傍点]である。今[#「今」に傍点]のお兄さんは恋愛的には好きになれない。昔の元気で明るい感じが好きだったのに。ねぇ、なんで変わっちゃったの
「ねえ、江川兎[#「兎」に傍点]はね寂しいと死んじゃうんだよ。だから江が……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます