2.人を見た目で判断してはいけない

 俺は緊張していた。彼女はおそらくゲーオタ。警戒する必要はないのだろう。だが、そのヤンキー(死語)風の容姿に、悲しいかな、スクールカースト最下層民の俺は脊髄反射で警戒してしまう。


「せっかくだから、二人でやれるゲームにするっすか?」

 ふふふ、ここは俺の腕でマウントを取ってやる。力関係をはっきりさせるためには、最初が肝心だ。


 俺は最も得意な格ゲーを取り出す。


「お、神拳っすね」



【神拳(いろいろトンでも設定な3D格闘ゲーム)】


「俺のポルポルの前にひれ伏すがいい!」

「んじゃ、あたしはネコ科のマスクマンで」


 Ready Fight!!


「くらえ! 崩拳──なっ!?」

「ほい、返し技で」


「10連っす」

「ぐはぁぁ」


 KO!!


「まだだ!!」


 Round Tow Fight!!


「投げコンボっす」

「いや、ここで抜けて、抜け、抜ける──」


 KO!!


「ま、まだ本気じゃなかっただけだ!!」



【ぶっとびファイターズ(ぶっ飛ばし系お祭り対戦ゲーム)】


「今度は勝つ! 聖三角の力を持つ剣士がお前を斬る!」

「なら、あたしはデザート系ピンクで」


「馬鹿め! くらえ回転切り!!──、な、寝たぁぁぁ!!!」

「ちょ、攻撃当たらない!!」


「ふはははは、ハンマーには抗えまい!! 大人しくぶっ飛ぶが──、え、投げぇぇぇ!?」



【インベーダーバスターズ(地球に襲い来るインベーダーや巨大生物を倒すシューティングゲーム)】


「俺たちは争いあってはいけないと思うんだ、共闘しよう」

「いいすよ」

「これは結構やりこんだぞ!」

「なら、ステージは"烈火"の地獄レベルにしましょう」

「え?」


「敵硬い! 敵硬い! 攻撃痛い! 攻撃痛い! あ……」


 ぴろーん(救援)


「すまん、今度こそは!!」

「敵多い、敵多い、敵多い、あ……」


「あー、もうクリアしとくんで」





 俺は打ちひしがれていた。そう、力関係は完全に決してしまった。完全に「彼女が上! 俺が下!」な状態だ。

「そ、そんな落ち込まないでほしいっす! あたし、零次さんとゲームできて、楽しかったっすよ!!」

 彼女は屈託のない笑みで、そんなことを言う。その笑顔がまぶしい。

「真緒ちゃん……」

 俺、間違ってたよ。彼女を見た目だけで判断して、どちらが上で、どちらが下か、なんてそんなことばかり気にしていた。それなのに、彼女は純粋にゲームを楽しんでいた! 俺は今感動している!!


「そうだな、真緒ちゃんの言う通りだ……、"ゲームは人の上に人を作らず"だ……」

 俺は真緒ちゃんの肩に手を置き、彼女の目をまっすぐに見据えて告げた。

「え……、なんかいい言葉風にまとめてる雰囲気っすけど、意味わかなんないっす……」


「よし! ゲームしよう!!」

「なんかよくわからないっすけど、いいすよ」


 その後も、俺はぼろ負けした。でもいいんだ! 楽しいし!

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