ギルド報告~セリア困惑~

「とう、ろく。……そうか分かった。セリア、そこのルアというやつの冒険者登録をしてくれ」


「は、はい。ただちに登録用紙を準備致します。少々お待ち下さい」


 秘書のセリアはゼレギスの反応、そして目の前にいる二人の態度で彼女は察した。この二人はやはりいつもの厄介なハンターとは一味ひとあじ違うと。

 この応接室に漂う空気は異様なもので、セリアも会って依頼を出して、二人が依頼の半分完了して来るという異常な事に気付いていた。


 セリアは応接室を出る。


(な、なんで姫様がいるの? ルアって愛称? ルアティ姫じゃないの? ほ、本当に登録する気なの? ……じゃ、じゃあ、男は何者なの? あと、昨日いたレヴって人は?)


 セリアの疑問は答えまで辿り着けないまま登録用紙を持って再び応接室に戻り、中に入ると一人増えていた。レヴだ。


(……ん? 増えてない?)


 レヴの両腕に装備した位置情報を特定するブレスレットを外すためマスターがレヴを取り出しただけ。ゼレギスの表情が硬く緊張した面持おももちでレヴのブレスレットを取り外していた。


「お待たせしました。こちら登録用紙です」


 セリアはとりあえず深く考えるのを止め、与えられた職務をする。応接室から受付にある登録用紙を戻って来るルートは一ヶ所。そこでセリアがすれ違ったのはギルド職員のみで違和感があったが、やはり深く考えるのを止めて、あとでゼレギスに聞けば良いかと考えるようにした。


「この討伐証明の素材はこっちが一旦預かる。一応、正式に鑑定する。結果は明後日また来てくれ。まぁ、俺の見立てじゃあ、これが本物だと分かるが、ギルドの形式に乗ってもらう。いいな」


「ああ、別に問題ない」


「それと俺の一存でそっちの嬢ちゃんのブレスレットは外させてもらった。昨日、お前さんが嬢ちゃんに2つもブレスレット付けさせたから次来たら1つ外してお前さんに付ける予定だったが……まぁ、ゴミ依頼ももう受ける必要ないから2つとも回収した」


「助かるよ。他に罰でやんなきゃいけないやつとかある? ないなら俺たちをFランクの冒険者にしてくれ」


「いや、他にやってもらうようなやつはない。明後日に『タグ』も依頼の報酬も渡す。そこで晴れてF級ハンターになる。それまでの今日、明日は依頼を受けられない。以上だ。何かわからないことがあったか?」


「いや、大丈夫だ。また明後日来るよ。それまでは適当に観光でもするよ」


 





-ドッグタグ-


 ドッグタグはギルドからハンターに配られる個人認識票である。用途は主に依頼の受付時に依頼登録、完了報告に使われる。他にはギルド口座アクセス時、ハンター死亡時の個人認識にも使われる。また、ドッグタグはタグと略されることがある。そしてハンターランクに応じてドッグタグの色が決められている。


 Fは青。

 Eは緑。

 Dは赤。

 Cは銅。

 Bは銀。

 Aは金。

 そしてSは黒ベースに金色の文字で『S』と書かれている。


-------------------





 


 マスターとルアとレヴが応接室から退室してギルドから出た頃合いでゼレギスが口を開く。


「なあ、あいつって言ってたよな」


「はい、言ってましたね」


「そうか……やはり--か」


 ゼレギスの「やはり」から先のセリフは小さくなりセリアはあまり聞き取れなかったが、『まおう』という単語が聞こえたような聞こえなかったような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る