ヴェディーユの配下蹂躙~レヴ風景~

 マスターが前に歩き出した瞬間に赤い霧が発生した。いや、違う。これは……血? なんの? 誰の? け--。



 -ドオオオォォン!!!



 大きな音がし、私は遅れて風圧がやって来て塵が目に入らないよう手をかざし、思わず顔をしかめた。

 音の正体はどうやら空を飛んでいた魔人のようだ。何がどうしてどうやって落ちたのかはわからない。けど、マスターが魔人を落としたということは今までの常軌を逸したマスターの能力から理解できた。

 

 そんな分析を冷静にしている間にマスターがデーモン4体の前にいた。まばたきもしていないのにデーモン4体が跡形もなく消え去り、替わりに『黒い空間』がデーモンのいた所に存在していた。

 あの『黒い空間』はマスターの謎能力を使う時に出していたものだったような気がする。ん? よく見ると何か見覚えがあるような……無いような。マスター以外にもあの『黒い空間』を使うやつがいたような……居ないような。

 マスターのあの強力な謎の能力は知っていたら忘れないと思うんだけどなぁ。うーん。




 あ、デーモンがマスターに向かって剣、振り落とそうとしてる。……!? だから、なんで相手が弾け飛ぶの!? なんで相手が負けんの!?


 マスターの意味のわからない能力に困惑していたらどうやら私の後ろにデーモンが攻撃しようとしていたようだ。なぜ過去形かというとマスターが私のすぐ横にいて振り向いたらデーモンが数体まとめて吹き飛んでいたから。

 ふっ。私のツッコミが追い付かない。考えるのもツッコムのもやめて、私はただマスターを観察することにしよう。




 マスターがまず、何の推進力かわからないけど前にも横にも真後ろにも上空へにも体勢を変えずに超高速移動する。次にマスターはデーモンに手で触れる。するとデーモンが消えるか、吹き飛ぶか、触れたとこが消える。そしてデーモンの攻撃はどんな攻撃であろうとマスターが防ぎきる。いや、むしろ攻撃したはずのデーモンがダメージを受けている。

 こうしてただ見ているだけの私にデーモンの攻撃が来た場合、マスターがまた超高速変態移動をして私のすぐそばまで飛んで来て攻撃を防いでくれるか、マスターがデーモンに視線を向け、手をかざした瞬間、デーモンが内臓から血と臓器と肉片を撒き散らしながら弾け飛ばし、私を守ってくれる。別に1、2体程度の攻撃なら私を守る必要ないんだけど。


 



「さて、私もそろそろ混ざりますか。……が馴染んできたし」




 そう、私はマスターの暴れっぷりをただほうけて見ていただけではない。最初の空気中に舞った獣タイプの魔物の『血』を取り入れ、次にマスターが私の近くで殺したデーモンの『血』を吸収し、見ていた時に飛んできた魔人の生首を手でキャッチして『血』を吸い取る。そして最後に私の体に付着しているドラゴンの『血』を体内に回収して混ぜて馴染ませていた。







(これで私はこいつらより強くなった)








「マスター! 私も混ざっていい?」


「ん? ああ、やれるならいいよ。無理そうなら止まっててくれればいい」


「ハッ! もう私をなめないでくれる? マスターこそ、もう見てるだけでもいいわよ」


「ん? そうか。なんか偉い自信ある発言だな。俺がこいつらとやる前までと、随分と態度が違うけど……どうした?」


「見てればわかるわ……よ!」


 私は魔法を使用することなく赤い電撃を身に纏い、デーモンにその電撃を放つ。の私ならこれではこれでは倒せない。だけど、の私ならーー。

 デーモンの胴体に風穴かざあなく。その風穴からバチバチッと火花が起こり、赤い電撃がデーモンの全身を襲い、そしてデーモンがちりとなる。





-バンパイア-


 種族特性により他種族の『血』をみずからの体内に吸収することができる。そしてその『血』が上位のまたは『血』を持つ個体の『血』を取り込めばその個体の持っていた能力を使えたり、自身の能力を強化することができる。上質な血を持つ個体というのは種族関係無しに能力が高い個体のことである。


 ただし、相手が上位な種族ほど血を吸収しづらく、そもそも馴染まない。馴染まないから能力も使えないし、自身の能力が強化されるということがない。

 だが、自分より少し上の種族の血を馴染ませ、次にさらに上位の血馴染ませ……と繰り返していくことで上位な血を混ぜられるようになる。


 レヴの場合はドラゴンの血も馴染み、レヴの能力が強化され、もともと血を操ることが他のバンパイアより得意なレヴは精密に『血』を操れるようになった。


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