とても平和な魔王城①
「まおーさま。起きてください。」
幼く可愛らしい声が寝室に響く。カーテンが開かれ、朝日が顔に降り注ぐ。眩しい。
「ほら、まおーさま、ちょーしょくが冷めちゃいますよ」
メイド服を着た声も見た目も10才もいってないような女の子が魔王のシーツを剥ぎ取る。知ってるか?これでも200歳超えてんだぜ?
-ペチンッ。
デコを
「まおーさま、今ルビに失礼なこと考えてたでしょ。」
魔王に対してメイドの女の子がプリプリ怒る。女の勘ってやつか?やけに鋭いな。ああ、そうだ、この子はルビという。俺がががが…-。
ガクガクガクッ。
「おはよーございますー。まおーさまー。」
上半身を起こされた俺はルビに肩を捕まれ、肩を揺さぶられた。その反動で頭がガクガクと動く。
「はぁ、今日もこれで起きないんですね。まおーさまー、じゃあ、いきますよ。」
ルビが魔王の肩から手を離し、右手で握り拳を作る。ん?行くって、どこにだい?俺を起こすのを諦め…---。
「スキル・デスインパクト」
ルビの拳がどす黒く輝き始める。あれ?そのスキルって即死耐性レベルが低ければ即死で、耐性あって即死を免れても攻撃力高めの上位スキルと遜色ない火力のやつじゃなかったっけ?
「
どす黒い輝きがさらに濃くなり、赤黒い稲妻がルビの右手に走る。
「おきろおぉぉー!!!」
ドゴーン。
こうして魔王のとても平和な一日が始まる。
---
ドコーン。
「はぁ、今日も起きなかったんですか。魔王様。」
私は自室で朝食を食べながら呟く。いつもの効果音。いつものコーヒーを飲む。今日も今日とて魔王城は平和だ。とても人間の国と戦争しているようには思えない。
戦争しているが人間側には魔王城に攻め込む戦力もなければ気力もないだろう。それに今おしているのは魔王軍で、もうすぐで外壁の中までいけそうだと知らせが来ている。
もう数日か遅くても一週間もすれば国を堕としたという報告が上がってくるはずだ。シェルが指揮をとっていることだしね。さて、祝勝パーティーはどうするかな。
なんてことを考えている内に朝食を食べ終え、食器を洗い身仕度を整え終える。「さて、今日も仕事頑張りますか。」と鏡を見ながら心の中で気合いを軽く入れ、頬を叩く。
そして部屋のドアを開ける手前で振り向き一言。
「いってきます。」
飼っている小さい
---
ドーン。
「ん?ハハッ。もしかして今日の魔王様のお目覚めタイムか?」
「アハハ。そーだろーね。まおー様寝坊助だし。」
「んじゃ、もうそろそろ切り上げて飯でも食いに行くか。」
「だね~。」
朝の訓練所にいつもの朝食の合図が鳴り響く。渋い声と軽い声の二人が静かに身構える。
訓練中はお互いの攻撃を交互に受け流したり、能力レベルや魔法レベルといったレベル上げをしたりしているが、朝の〆は互いの大技を同時に放ち合うのが日課だ。
その日課の合図が魔王の目覚まし音で、相性が良ければ互いの技が相殺されて引き分け、相性が勝っている方が一方的に勝つ。手数が多いジャンケンだと思ってくれればわかりやすいか。
まぁ、大抵、引き分けになる。互いの攻撃が上手く相殺しきれずにお互いに大ダメージをくらいあったり、上手く相殺したと思っても『超高温のオリハルコンの塊をファイアーボールと超低温の水を多分に含んだ特殊液体の攻撃魔術がぶつかり合った時は互いの技は相殺したが、ドでかい水蒸気爆発が起こり互いに気絶する』という引き分けになることが多い。この間は粉塵爆発して、そして今日は…。
---ドーン!!!
今日も魔王城はとても平和だ。
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