アイテムボックスでヒロイン登場④~ただし、『ツッコミ役』でしかない~

温度差が激しかった。


 主に俺の温度が高すぎるだけなんだけどな。レヴは戸惑う。俺も戸惑う。俺自身も何でこんなテンション高いのかわからず『いいねボタンのアイコン』みたいなジェスチャーをしていた。


 互いに動かない。いや、動けない。動けば負ける。だが、おくせば負ける。交錯こうさくする視線。先に動いたのは---。








ザッ。















 ゴブリンだった。




「いや、ゴブリンかよ!」


 俺は茂みから出てきたゴブリンにツッコミを入れた。アイテムボックスでツッコミを入れたため、ゴブリンの上半身は弾け飛ぶ。


 また、ゴブリンの返り血で全身真っ赤になるのは嫌なため、俺はアイテムボックスにゴブリンの下半身を血が飛び散る前に収納する。


「っと、同じ轍は踏まねえよ。」


 ゴブリンの上半身はというと、血を撒き散らしながら森の茂みの中へ飛んでったため、血が辺りにべったり付いている。さながら何十体かを大量惨殺し、死体だけを後始末したような光景になる。


 ただゴブリン1体を狩っただけで大量惨殺スプラッタ劇場が誕生した。








 一方、レヴはわけのわからない状況にわけのわからないことを言われ、わけのわからないやつがゴブリンにツッコミを入れて、わけのわからない強さ(?)を見せつけられて、わけがわからずただ突っ立つことしか出来なかった。


(ん?んん!?…訳が分からない!どゆことぉ!?)


 ち、近づいてくる。スプラッタを作り出した犯人が…。


「なんかよくフリーズするなぁ。叩きゃ直るか?」


 などと口走る犯人。私は動けず、犯人の動向を探る。犯人は右手を挙げ、握りこぶしを作る。



ゴッ!



 鈍い音がした。どうやら私は頭部を殴られたようだ。じんじんと痛みが増してくる。…って、冷静なこと考えてる場合じゃない!


「っつ~~~、った!いなあぁ!もう!何すんのよ!」


「おおっ!直った!」


「なぁにが、直ったぁだぁよ!」


 私は握り拳を作り、ふつふつと怒りを煮えたぎる。


「おお!なまった!」


「訛ってないわよ!ってゆーか、レディを殴るとか無くない!グーで殴るとかあり得なくない!?」


「おぉ、そうか…。悪かった。次直すときはパーにするよ。」


「パーでもすんな!乙女殴んな!直すってなんだ!ってか!いい加減私の状況説明しろ!」


「はぁ、やれやれ、これだからヒステリックな女は…。」



「ぐぬぬぅ~~~。」

(耐えろ私!負けるな私!このくらいの上司に日々付き合っていたじゃないか私!思い出せ私!あの自己中野郎の戦闘狂と超マイペース上司に振り回されてきた私!この程度で負けるな私!)


 怒りを落ち着かせ、情報収集のため、無理矢理冷静を装う。


「っふ、で?なんで私はあんたの奴隷になってんの?」


 男が急に話し出す雰囲気を変えた。


「知りたいか?」


「~っ!…えぇ、知りたいわ。」


 男の急なトーンダウンに息を飲み、ビビる私。…いや、ビビってないかないわよ!私。いや、ほんとだからね?


「…それは、俺に負けたからだ。」


「負け…た?」



 一陣の風が吹く。


サー…ッ。


 木々が揺れ、が舞う。まだ朝の寒い、肌に冷たい風が触れる。…少し鳥肌が立ち、ゾクリとする---。





































「命令だ。『俺のことをご主人様と呼べ』」


「いや、なんで今、その命令出したよご主人様!シリアス展開壊すなよ!」



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