第30話
翌日、九郎は清水寺の縁日に行った。たくさんの人の賑わいがそこにはあった。笑い声、歓声。時に聞こえる子供の鳴き声に、はたと足を止めるも、すぐにあやす親の声が聞こえ、心を和ませるものとなった。それを眺めつつ、九郎は清水寺の中へと足を進めた。
久々に感じる市井の賑わい。それが何とも嬉しかった。自分の背負っているものは、自ら望んで背負ったところもある。だが、それが重くも感じる。こうして、楽し気な人並みに紛れると、それを忘れることが出来た。その楽しさの中に浸っていた。
お参りを済ませ、帰ろうかと思った時、人波の中に頭どころか胸まで抜きんでている者があることに気付いた。それに気づいただけでそれまでの楽しさが一気に吹き飛んでしまった。
(あれだけの体格の者がそうそう居るとも思えない。間違いなく、過日の男)
九郎が見ている事に気付いた男はくっと顎で九郎を誘った。逃げることは容易いが、そうなれば却って周りに迷惑をかけるかもしれない。九郎は黙って男の指示に従った。
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