第48話 ネットでのバグ戦

「敵のタイプは『ワスプ』が12、『メガバタフライ』が4体です!」





 れんがモニターに表示されたデータを読み取って、こちらに教えてくれた。


 ワスプにメガバタフライ……飛行に特化したタイプのバグであり、ネット空間に慣れていない僕たちにとっては少し手間取りそうだ。





「数が多いな……やむを得ない。私とチカである程度足止めはするが、そちらにも襲ってくると思う。とにかく自分の身を守ることに専念しろ。いいな!」





 まもる先生のタクティカルフレーム『シュヴァリエ』と、チカの『フェー』が先行する。


 向かった先から、戦闘の音が聞こえてきた。


 僕たちは、必死にマントを使ったネット空間の移動に慣れるよう、努力する。





 やがてうち漏らしがやってきた。


 こちらに来たのは、ワスプが4、メガバタフライが1体だ。





「メガバタフライ3体を足止めしてくれただけでも、御の字だな――では、いくぞ!」





 久朗くろうが先行する。


 既に移動はばっちりのようで、高速でワスプに近づき、すれ違いざまにナイフの一撃を叩き込む。


 更に離れるときは拳銃を使って、その反動すら利用して高速離脱し……早速ワスプの一体が、粒子になった。





 ……基本的に久朗は、スペックが高い。


 普段はふざけたような言動が多いので、騙されがちなのだが……正直僕よりも、ヒーローとしての素質は高いと思う。


 ネット空間にもすぐに慣れて、こうして近接戦闘すらこなせるのだし……。





「にゃ、ここは私の出番! 『ガトリング・ドローン』&『ドリルビット』、全機射出!」





 みかんが遠隔操作の兵器をバックパックから放出した。


 相手が飛行し、かつ機動力があるタイプであるため、こういった兵器が非常に効果的なのだ。





 ガトリング・ドローンがワスプに襲い掛かる。


 三方向からの射撃と、ドリルビットの直撃により一瞬にして、ワスプが粒子になって消滅した。





「俺たちのように、遠距離攻撃が苦手なタイプはカウンターを狙ったほうがよさそうだな」


 あきらがアドバイスする。





 こちらに向けて、ワスプが突っ込んでくる。


 晶と僕に、それぞれ一体ずつだ。





「甘いぜ。『鉄山靠てつざんこう』!」





 晶がワスプの攻撃を受け流し、強烈なカウンターを叩き込む。


 背中を思いっきり叩きつけられたワスプはふらふらになり、そこに追撃の『マシンガン・ブロー』が決まり、あっさりと粒子になって消滅する。





 もちろん僕も、見ていただけではない。





「ひきつけて……今だ! 『飛燕斬ひえんざん二式にしき』!」





 通常の飛燕斬よりも効果範囲が広いため、飛行する相手であっても補足しやすいのだ。


 カウンターを受けた形になったワスプは、真っ二つになって消滅する。





「行くぞ! 『φファイコンビネーション』!」





 久朗の方は、メガバタフライを相手にしていた。


 鱗粉の攻撃を回避し、そのまま必殺のコンビネーションを叩き込む。





「援護するにゃ。『炸裂バズーカ』、発射!」





 みかんが『ビーク・スマッシャー』で動きが止まったメガバタフライに対して、バズーカを叩き込む。


 通常のものとは異なり、直撃後に炸裂するタイプの弾丸を選んだようだ。


 爆発範囲が狭いため、普段ではやや使い勝手が悪いのだが……停止した相手に対しては通常のものよりも、はるかに効果が高い。





「少し動きを変えて……これでどうだ!」





 今回は締めの突撃の前に、拳銃を使って装甲にライン状のヒビを作ったようだ。


 そこにナイフの一閃が襲い掛かる! 





 バッサリと切り裂かれ、粒子になって消えていくメガバタフライ。


 戦闘はダメージを受けることもなく、完全な僕たちの勝利に終わった。





「悪い。漏らしたのだが……すごいなおい。ネット空間でも圧勝じゃないか!」





 守先生が戻ってきた。


 既に戦闘が終了していることに、驚きを隠しきれないようだ。





「みんな、すごい」


 チカも、絶賛している。





「いや、チカもすさまじかったぞ。俺は単に彼女を守ることに専念していたのだが……遠隔操作ユニットなども駆使して、うち漏らしを最小限に抑えていたのだからな」





 たった2人で、11体もの相手をしていたのだから……本当にすごいのはどちらなのかは、自明の理である。





「ネット空間だけに限定するならば、チカはそれこそプラチナクラスのヒーローだからな」


 守先生が、太鼓判を押した。





「さて、いきなり戦闘になってしまったが……これからホームページに向かい、どんな感じになっているのかを確認するぞ」





 守先生曰く、今いるところはホームページの狭間にある空間らしい。


 この空間で光っている星それぞれがホームページで、そこでは重力が働き、通常の大地と変わらないロジックで行動できるようだ。





「まずは学校のホームページに向かう。マントを使って、飛行する訓練を兼ねてこのまま移動するぞ」





 守先生の指示に従って、僕達は大きな星に向かって移動を始めた。

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