僕のSF

琴波 新 (水)

謎のやつ あるいは日記的な何か その1

僕の夜空

 今日、後輩のtwitterを見ると、彼は月について詠っていた。

 しばらくして、大学を出た時、空を見上げると、そこには綺麗な月が浮かんでいた。

 月はあと四日もすれば満月というところだった。

「あの月、まん丸じゃない」

 僕は一緒に帰っていた後輩たちに言った。否定的なニュアンスで。(この後輩はtwitterの人とは別だった)とにかく否定したい。自分以外の全てを。自分自身を守るために。過去の自分すらも。

 でも、よくよく考えれば、月は綺麗だった。名前をつけがたいその月は、それでも薄い黒の夜に、煌々とその存在を示していた。不恰好に。

 僕は言った。

「月は天蓋の栓なんだ。夜空のドームに降りかかる闇の瀑布を受け止めている。きっと、あの栓が抜けたら、ここも夜になってしまう」

 後輩は言った。

「そうなんですか」

 あんまり、気に入らなかったらしい。僕はその表現を気に入ったつもりになっていたので、ちょっと残念だった。

 でも、それは、後輩のtwitterの詩を否定するための詩だった。

 でも、夜は否定できなかった。

 不恰好な月も否定できなかった。

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