第4話 はじめてのモンスター
「いやぁ、しっかしこんなことになるなんてな」
ウェーバーはこんな時だっていうのに豪快に笑って言った。
「勇者様の物語みたいなことが俺の生きているうちに起きるなんてな!俺も運がいいな、これで『ちょっとそこまで』じゃない一流冒険者として、名を轟かせて伝説になるんだ、よよっしゃ!いっちょやってみよ!」
ウェーバーは瞳を輝かせて鼻息まで荒く、うっとりと夢見がちな瞳になった、……あぁ、またか。
「ウェーバーってその勇者様の絵本に憧れて冒険者になったんだよね」
イリス、もう聞き飽きているのにまた聞いてあげて偉いなぁ。
「あぁ!子供の頃はけっこうショックだったんだ、俺には伝説の勇者にあるという聖なる力も聖なる印もないらしい、それでも!いつか勇者様のお力になるなら!」
わたしの頭には今、「そうは言ってもまずは一流冒険者試験に受からなきゃね?」と「あ、ずるい!わたしも!」と言う言葉が浮かんだ、でも決心したんだ、一流の錬金術師になるって、まずは言動から。
「あ、ずるい、わたしも!一流錬金術師ならきっと勇者様のお役に立てるよ!だからお願い……ね?」
わたしはわざとらしく涙を浮かべて可愛い子ぶって言った。
「アリサお前なぁ……まぁ勇者様ならきっとすげぇいいやつだろうし頼んでみるよ」
ウェーバーはわたしの髪をぐしゃぐしゃに掴んで冗談みたいに言った。でも、顔は真剣だ。
「そうね、勇者様が絵本の通りなら、きっとみんなと仲良くしてくれるよ」
イリスの言葉にみんな頷いて、まだ空の暗い森をゆっくり歩く。
ちょっと飛び出しただけの鳥や前を歩いただけの山猫にみんなびくびくしながら、それでもウェーバーの励ましもあって、ゆっくり歩く。
「あぁ、馬車があればいいなぁ」
森のウリ坊に驚いた後、イリスが岩に寄りかかってひいこらいいながら言った。
「馬車かぁ、楽だけど、高いよね」
わたしは頷く、暗いけれど暑い、腰に持った水筒を飲む。
「お前ら大丈夫か?ここまでにするのか?クリアネスにはもう少しで……」
ウェーバーがそう言いかけた時、がさっ、と草むらから音がした。
「また蛇とかかな?もう驚き疲れたよ……」
イリスが弱音を吐くけれど、あらわれたのは動物じゃなかった、暗き影、実態はなく浮いている……。
「モンスターだよ!」
みんな慌てて戦闘態勢に入った。
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