第2話 魔王城降臨
さて、そうしてまずは一人前になるために何をしよう?
今作れるのは蝋と傷薬、行けるのはロック山。
お城はここからは馬車で何日もかかかるし、大きな街のロイヤルジェルだって同じこと。
それでもわたしがここロッドリーフ村の家を借りられるのはラッキーだった、家賃はただ同然だし、こうしてイリスやウェーバーもいるし。
ちょっと足を運べば薬草の材料があって水もその辺のを汲めばいい、ね、いいでしょ?
さて、まずは今日の分、イリスの露店に並べる傷薬を作ろう。
材料はあるかな。
水も薬草も足りないね、じゃあ、ちょっと行ってこよう。
「おっ、今日もロック山か?付き合うぞ」
外に出たら大きな身体のウェーバーが話しかけて来た、彼は同じ学校の「冒険者育成」コースから冒険者二級の試験にみごとに受かってわたしと同期に卒業した友達、ここで再会したのは驚いたなぁ。
冒険者二級が警護できるのは「ちょっとそこまで」。ドラゴンとかデーモンとか強い伝説上の生き物は無理だけれど、ゴブリンとかスライムなら、って感じ。でもそれで十分だと思う。
「ごめんね、今日はただそこに水と薬草を取りに行くだけなの、銀貨があったらお願いするね」
「なんだ、じゃあ、俺一人で修行するか」
ウェーバーはトボトボと去って行く。
「また何かあったらお願いね」
ここはロック山以外何もないし、特に用がない限り村を出ようという人はいないから、ウェーバーはいつも暇を持て余して、木こりっていうか、お風呂にくべる薪を切る仕事で生活を成り立たせている。
あとは鍛冶、包丁研いだりね。冒険者って武器の手入れできなきゃって学校で習ったらしいけど、ウェーバー、包丁研ぐの得意なんだって。評判いいんだよ。
それでもいつかドラゴンとやりあえるようになりたいって本人談。
わたしも頑張らなきゃ、えぇっと薬草薬草……。
ちょっとだけ村の外に出よう、モンスターと出会いませんように。
門が見えるところにしよう、そうすれば何かがあっても村に帰れるよね。
ところが、
急に晴天だった空が暗くなり、雷が鳴る。
そしてその暗雲の空から出でたるは天空に浮く島に乗ったまがまがしくもおどろおどろしい黒き城、ちょうど子供の頃、勇者様の話を絵本で見せられた時に「魔王」っていうのがいて、たしかあんな城に住んでいた気が……。
島は城を乗せたまま、ゆっくりとどこかへ降りていく。
わたしは慌てて村へ帰ろうとするけれど、脚がすくんで歩けない。
「おい!何やってる!早く立て!」
ウェーバーが村の外にいるわたしに気付いて、わたしの手を取り走った。
わたしは呆けていた気を取り直して、その手を取った。
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