台所の廃墟
ガラス瓶は古代遺跡か
墓のように寂として直立して、ある
ピクルスを漬けた叔母の形見
家と遺体を処理する金だけを
残して叔母は死んだ、終活は滞りなく
家の中はがらん、として人の気配は
消えて三十年前に死んだマルチーズの
首輪がテーブルに置いてあった
兄はアラジンのアンティークな白いストーブ
父は特に何も、母はティーセットを一式
残っていたのはピクルスの瓶たちと
首輪だけで捨てるのも忍びないから
首輪を使って輪投げをしてる
直立する瓶を並べ替えて
段々と右肩下がりに
したり左肩下がりにしたり
凸凹に置き換えたり凹凸にしたり
首輪を王冠のように引っ掛けてやる
胡瓜にパプリカ、キャベツの芯にらっきょう
瓶の中で眠る王族たち、やはり墓場だ
古代墳墓が台所に直立して
蓋を開けたら墓荒らし
だからまだピクルスの瓶たちは
静かに直立している、猫たちが
たまにその間を街路のように
縫っていく、台所に佇む廃墟
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます