重力波・2
重力波の観測がなぜ重要か、って問題なんだった。
ぼくらの目は、「可視光」って光を感知して、脳で処理して、イメージにフィードバックしてる。
可視光ってのは、波だ。
この波を解析して、具体像に起こしてるわけね。
宇宙の可視光を集めると、おなじみの星空の写真になる。
だけど、可視光で見えないものも見たいじゃん。
例えばお医者さんにいって、お腹が痛い原因を突き止めてもらうのに、目で見てもらうだけでは心もとない。
レントゲン検査(X線で体内を見る)をしましょうか、となる。
こんな具合いに、可視光とは別の波を見ることによって、イメージはより多面的、立体的となる。
宇宙に目を向けてみると、可視光だけではとらえきれない現象がたくさんある。
じゃ、こいつを、今度は赤外線で見てみましょうか、それとも紫外線で見てみましょうか、となる。
そうすることで、星の組成がわかったり、内部の構造がわかったり、温度がわかったり、そこでどんな事件が起こってるのかがわかったりする。
光を・・・つまりいろんな波を解析するってのは、そういうことなんだ。
さて、そんないろんなレンズで、1億光年先を見てみる。
その光は、ご存知のように、1億年前に放たれたものが、光のスピードで地球に向かい、やっと届いた今この瞬間(1億年後)に観測されてるわけだ。
波が、発信源から1億年をかけてひろがりつづけ、やっとぼくらの目に入るまでにひろがりきったわけ。
この調子で、10億光年の彼方を見てみる。
それは、10億光年の距離を隔てた遠くの風景だけど、同時に、10億年前の光景でもある。
100億光年先を見てみる。
それは、100億年前の映像だ。
だとしたら、137億光年先を見てみたら?
それは、ビッグバン、すなわち、世界が誕生したときの光景だ。
137億光年の彼方を見るということは、137億年前に起きた現象を観測するってことなんだ。
ところが、可視光で、この距離のものは見えないんだ。
133億光年くらいのとこまでは、今のとこ、宇宙に設置した望遠鏡で見えてるらしいんだけど、そこから先が難しい。
そして、見ることが絶対不可能なラインが存在するんだ。
ビッグバンから時間がたつこと38万年、ってラインだ。
そこまでは、宇宙がビッグバンの余韻で煮えたぎってたんで、光(光子という粒子=波)が他の粒子とこんがらかってた。
つまり、もやもやしててクリアに晴れ上がってないわけ。
見るべき光がそこにないんだから、どれだけ観測したって、可視光は拾いようにない。
赤外線もダメ、電波もダメ、X線もダメ・・・どの波もダメ・・・じゃ、どうすりゃいいの?ってことになる。
そこで、「重力波を拾いましょう」となるわけ。
ビッグバンは、その後に世界を創りだすあらゆる物質、すべての質量を爆発的に吐き出した現象なんで、重力もすごかろう。
そいつを解析して、世界が形づくられた描象を立ち上げてやろう、ってわけなんだった。
そんな科学的野心が、重力波の発見の裏にはあったんだね。
なおもつづく。
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